神仏習合というM&A

 

 

【仏教が戒めるのは執着】

宝瑞院は5⽉に運営体制を変更しました。

具体的な内容は、宝瑞院の公開企画会議などでご報告いたしますが、ここでは私の思いを中⼼にお伝えさせていただければと思います。

私は少し、思い上がっていました。 お寺の管理体制を上場会社並みに整えた上で、ビジネスでは届かない社 会問題の解決に宗教法⼈として取り組み、同時にライフワークでもある ベンチャー⽀援も展開しようと考えておりました。

その結果はご想像通り、宝瑞院は前に進めなくなりました。

永年サイバーエージェントを⾒てきましたので、志の低いお⾦儲け、収益や時価総額が⽬標では、⼼が満たされなくなっておりました。

社会に貢献する永続的なインフラを構築したい、そんな執着に私の⼼が ⼀杯になっていたのかもしれません。

リカバリーインターナショナル㈱は訪問看護専業の上場会社ですが、創業直後から私は社外取締役を務めております。この会社が上場した際には、嬉しくて涙が⽌まりませんでした。

上場会社の社外取締役としては不適切かもしれませんが、利益成⻑の期 待には応えられなくても、訪問看護の鉄壁なインフラをこの⽇本の実情に合わせて磨き上げるべきだと役員会では話しております。若い経営陣を混乱させるだけですが、これも年寄りの役割です。

売上・収益といった、⾃分の「外」に⼼を奪われての⾏動を、仏教では 「苦⾏」と呼びます。「苦⾏では幸せになれない」とは、仏教の⼤原則です。 仏教が戒めるのは執着で、売上・収益の⽬標⾃体ではありません。

【仏教でもお金は重要だ】

仏教でもお⾦は重要だ、私はそんなことを学んだ気がします。2008年に私が経営する会社は破綻し、それから15年、修⾏の⼀環 として、私は⾃分から他⼈にお⾦を求めることを⼀切⽌めました。

この筏(いかだ)もついに、役割を終えたようです。 仏教は「お釈迦さまの教え」ですが、⽇本に伝わる⼤乗仏教は、歴史学・⽂献学の観 点では、お釈迦様の教えではありません。

⻄洋の研究者には同じ「仏教」とは思えない程の⼤きな乖離があります。 中国や⽇本では、⼤乗仏教もお釈迦様の教えとの前提で教学を組み⽴てられ、本来の お釈迦様の仏教は「劣ったもの」と解釈されました。

お釈迦様の教え(≒上座部仏教)が再評価されるのは、⻄洋の仏教研究が⽇本に逆輸⼊された結果とも⾔えましょう。「歴史上の真実と宗教上の真実は異なる」という説明も良く聞かれますが、⼤乗仏教 とは⼀体何なのか、私は今も少しモヤモヤしております。

話は変わりますが、阿含経に「神々との対話」という章があります。 ⼀番古いお経の⼀つで、お釈迦様の教えに近いと考えられております。 「神々」とはインドの神々でしょうが、私はついうっかり、⽇本の神々や、スピリ チュアルな世界の教えと混同して読んでおりました。 神々は現世の利益を与えますが、お釈迦様は現世の執着を乗り越える道を説きます。

神々は輪廻転⽣を繰り返す最上位の存在ですが、お釈迦様はその輪廻転⽣⾃体を乗り 越え、永遠の静寂の世界にお住まいになります。 神と仏の間には、⼤変分かりやすい質的な相違が存在します。

【友よ!】

ただお釈迦様は神々に「友よ!」と呼びかけます。 儀礼的な⾔い⽅に過ぎないのかもしれませんが、神と仏は質の相違を乗り越え、あるいは本当に「友」なのかもしれません。 仏教には上も下もありませんが、神々の世界には上下関係や競争があります。

神と仏の関係は、上下関係というよりは役割分担だと思います。現世での栄華が⼤切な⼈には、お釈迦様の出る幕はありません。⼤乗とは⼤きな乗り物ですが、⼈気のないお釈迦様は寂しくなって、神々をお誘いしたのかもしれないな、私はそんな妄想を楽しみました。

神と仏は別の業態ですが、⼤規模店舗なら共存が可能かもしれません。あるいは連⽴政権なのかもしれません。 ⽇本では江⼾時代まで、神仏習合が⼀般的でしたが、このM&Aの交渉は、阿含経の時代に既にスタートしていたようにも読めます。 宝瑞院は阿弥陀如来をお祀りしますが、神様とも仲良くしております。

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ38【2023年6⽉号】

を大原浩の責任で編集したものです。

★沼⽥榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)、 人間経済科学研究所フェロー

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

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