イノベーションと起業家精神(ドラッカー名言集5)

P.F.ドラッカーダイヤモンド社

 

この本は、確か4回〜5回ほど読んでいると思います。同じ本を読んでも、その都度自分自身が成長するおかげで、新たな内容を学ぶことができる(特に名著)というわけです。

ドラッカーは、「マネジメント」を最初に体系づけたことで有名ですが、ビジネスは<マーケティングとイノベーション>で成り立っていることを看破したことの方がむしろ重要だと考えています。

イノベーションは「思い付き」のようなものだと思われがちですが、<マネジメントと同じように体系化し、繰り返し行うことができる>というのが、本書の重要な主張です。

特に大事なのは、「現在の仕事」と「将来の仕事」は両立しないということです。企業を存続させていくためには、「今現在」の収益が必ず必要で、「現在の仕事」抜きには語れません。ですから「現在の仕事」の担当者が、目の前の仕事に全力投球するのは当然ですし、むしろそうすべきなのです。

ところが「イノベーション」を基本とする「将来の仕事」は、今現在1円の利益も生みません。経費はすべて「今現在」の仕事におんぶにだっこで、むしろ彼らにとっては足手まといです。

「現在の仕事」の中に「将来の仕事」を配置する企業が多いのですが、それではイノベーションは成功しないというのがドラッカーの考えです。

「将来の仕事」は生まれたての赤ん坊のようなものだから、働き盛りの企業戦士に預けても十分面倒を見てもらえない。乳母や保母さんのように愛情を注いで育ててくれる人々に預けるべきなのです。

具体的な方法の一つとして、ドラッカーは「将来の仕事」のトップには少なくとも役員クラス(場合によっては社長直轄)を選ぶべきだと言います。

<文責:大原浩>

 

 

参考書籍等紹介

ドイツの(失敗に)学べ!

  ドイツの(失敗に)学べ! 川口マーン恵美 WAC   世界で「人権・環境全体主義」が猛威を振るっている。要するに、人権や環境を錦の御旗に、独善的なイデオロギーと強圧的な政治で、国民の自由な活動を抑圧しようとする勢力で .....

『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』、映画ディア・ファミリー原作

    清武英利著、文春文庫   事実を基にした「ノンフィクション」である。 語り口は淡々としている。取り立てて激しい感情表現があるわけでは無い。 だが、登場人物たちの心の奥底から湧き上がってくる感情が、圧倒的な力で迫っ .....

「黄金の馬」 パナマ地峡鉄道 ー大西洋と太平洋を結んだ男たちの物語ー

      ファン=ダヴィ・モルガン著、中川 普訳、三冬社 本作品は、子供の頃夢中になって読んだロバート・L. スティーヴンソンの「宝島」を思い起こさせるところがある。子供向けの簡略版であっ .....

確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか

デボラ・J・ベネット白揚社

 「杞憂」という言葉があります。  中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から生まれました。心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しますが、「天が崩れ落ちてくる確率」 .....