よくわかる病理学の基本と仕組み

田村浩一秀和システム

<おわり>に書かれている内容によれば、執筆を始めてから3年・・・一般の読者にもわかりやすいように、編集者からの「?」に答え続けて完成した本だそうです。確かに、私のようなど素人にも驚くほどわかりやすい本です。

写真や図解もふんだんに使われていますが、このような良書に仕上がったのは著者のキャラクターによるところが多いのではないでしょうか?索引の後ろに隠れるようにして掲載されていたので、危うく読み落とすところだったのですが、かなりユニークな経歴の方で、しかもそのユニークな経歴をこのような専門書のプロフィールとして掲載するところが「ユニーク」です。

病理学の本を読んだのは、今後日本で発展する医療関係のビジネスを研究するうえで、医学の基本ともいうべき病理学の知識は不可欠だと考えたからです。その他に米国TVドラマの「ドクター・ハウス」の中でよく「生検」という言葉が出てきて気になっていたことや、「チーム・バチスタ」シリーズで、病理医が結構登場することなどもありますが・・・

もちろん、木に例えられるそれぞれの臓器や部位の細かな症例にも触れていますし、すっきりと(それなりの努力は必要ですが)内容が理解できます。しかし、それ以上に「人体」という森に対する見方(哲学)がしっかりしているので、読み進むうちに「人体の仕組み」がとてもよくわかるようになります。 

実用面でもっとも役に立ったのは「痛くない注射の方法」です・・・

<文責:大原浩>

参考書籍等紹介

確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか

デボラ・J・ベネット白揚社

 「杞憂」という言葉があります。  中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から生まれました。心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しますが、「天が崩れ落ちてくる確率」 .....

たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する

レナード・ムロディナウ ダイヤモンド社

 「偶然」にまつわるエピソードを、世の中の幅広い範囲にわたって歴史的に深く洞察した良書です。特に歴史的なエピソードには興味深いものが多く、カルダーノの半生は注目されます。  そもそも、「確率論」や「統計学」は、古代ギリシ .....

『アメリカ経済 成長の終焉(上・下)』

『アメリカ経済 成長の終焉(上・下)』 ロバート・J・ゴードン著,高遠裕子・山岡由美訳 ロバート・ゴードン教授(米国ノースウェスタン大学)といえば、米国のマクロ経済学者であり、生産性問題研究の大家である。本著は、ゴードン .....

名画で味わうギリシャ神話の世界

有地京子大修館書店

ダイナミックな愛憎の芸術を語る 有地京子氏は名画解説者であるが、「表意文字」ならぬ「表意絵画」の専門家でもある。例えばアルファベット26文字それぞれは単なる記号にしか過ぎないが、その多彩な組み合わせによって、驚くほど深い .....