ジェフ・べゾス 果てなき野望 アマゾンを創った無敵の奇才経営者

ブラッド・ストーン日経BP社

 

ビル・ゲイツやスティーブン・ジョブズをはじめとする起業家(ITに限らず・・・)は概ね、「ゲスの極み乙女」ならぬ「ゲスの極みおっさん」の場合が多いのですが、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスの場合も期待通り(あるいはそれ以上)の「下司野郎」のようです。

しかし、決して「下司野郎」を非難しているわけではありません。そもそも、品行方正でこじんまりしているような人間が、「起業という苦難の道のり」で成功することはまずありません。「狂気」と呼んでもよいような異常なエネルギーで、周囲をなぎ倒し巻き込んでいく人間こそ真の起業家であり、世の中ではそのような人間を「下司野郎」と呼ぶわけです。

ジェフ・べゾスはアマゾンが有名な割には、あまり知られていない人物ですが、この本を読むと「下司野郎」のトップクラスに君臨することが良くわかります。彼の妻が、この本に★ひとつという厳しい評価を下して話題になったのも納得できます。

500ページ近い本ですが、アマゾン創業以来の歴史を振り返ることは、E コマースの歴史を振り返るのと同じであり、かなりダイナミックな内容なので飽きずに読めます。

また、彼の実父と養父の件についても、かなりドラマチックな構成になっており、物語としても十分楽しめます。

ジェフ・べゾスが「下司野郎」でいる大義名分は「顧客第一主義」であり、それは実際そのように実践していると思います。私もアマゾンを利用していて看板に偽りは無いと感じます。

ただし、アマゾンが(もしも)Eコマースの世界を支配してしまったら、その後も「顧客第一主義」を続けるのかどうか不明です。

<文責:大原浩>

 

 

 

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