ドラッカー名言集

P.F.ドラッカーダイヤモンド社

 

今回読んでみて印象深かったのは次の点です。

 

  1. 要素に分けて分析するだけでは意味が無い

複雑にからんだ事実を要素に分解することを私は「因数分解」と呼んでいますが、一つ一つの数字の羅列にするだけでは意味が無いということです。例えば長い文章を「ひらがな」という最小限の要素に分解したとします。「は」「こ」「が」「き」「み」という分析された要素を見ても名何のことかわかりません。しかし「は」「み」「が」「き」「こ」=はみがきこ=歯磨き粉と関連づけることによって、意味のあるものになります。

また、時計を分解して、ネジやゼンマイを並べたものにしても、「時計」というものは理解できません。それぞれの部品がどのように連携して動いて時を刻むのかを理解することが重要なのです。

 

  1. 計画する人と実行する人を分ける必要は無い

 

特に大企業では、計画を立てる人と、それを実行する人がはっきりと分かれていますが、ドラッカーは、それらの役割を分ける必要は無いし、むしろ同じ方が望ましいと主張します。

ありがちなのが、役員や経営幹部、あるいは経営企画部の考えた案を現場に無理やり押し付けて実行するパターンです。

日本以外、特に欧米の企業の意思決定や決断が早いと褒めるマスコミや評論家がいますが、彼らが素早く決定できるのは、「実行する人=現場」のことを何も考えないで無視しているからです。どのような人間でも、押し付けられた目標(計画)を積極的にやろうなどとは思いません。ですから、少なくともドラッカーが想定している「知識労働者」レベルの仕事では、欧米流のトップダウンは機能しません。

むしろ、よくマスコミや評論家にたたかれる、時間をかけて現場(実行部隊)とも根回しをする方式が「知的労働」には適しているのです。この方式であれば、計画(目標)の決定に実行部隊である現場も最初から関与しているから、計画を押し付けられるのではなく、自らの計画を実行する形になるので、スムースに物事が運ぶのです。

 

(文責:大原浩)

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