繁栄 明日を切り開くための人類10万年史(下)

マット・リドレー早川書房

上巻に続いて非常に充実した内容です。特におすすめなの、が第10章<現代の悲観主義―2010年以降のアフリカと気候>です。

キリスト教はもちろんのこと、「人類滅亡」は宗教だけではなくあらゆる分野で有史以来大変人気のあるテーマで、予言者たちは繰り返し人類の滅亡を宣言してがっぽり儲けました。

現代でも、「世界や日本が大変ことになる!」というテーマの本はよく売れます。ところが、私が「オオカミおじさん」と呼ぶ、現代の予言者のお告げはほとんどはずれる結果となります。しかし、だれもその無残な失敗を批判しないどころか、ほとんど気にすることなく次のお告げを待ちます。

人類滅亡論は、有史以来1万年近く一度も当たったことが無いのですが・・・・

第10章では、今やカルト宗教とでも言うべき「地球温暖化(詐欺)」の「不都合な真実」を理路整然と暴き出します。これだけ明確な証拠があるのに、いまだに地球温暖化を叫ぶ人々は、知性や教養に欠けるといわざるを得ません。

もっとも、地球温暖化に関わらず「環境活動家」といわれる人々は、ほとんどカルト宗教の扇動者で、科学的根拠ゼロの「環境保護」(本書にもあるように、彼らの言う環境保護活動が、自然を破壊しているケースは数え切れません)、を人々に洗脳しようと躍起です。

例えば、エコだと喧伝される再生可能エネルギーが、どれほど地球の自然環境を破壊するのかを本書は明らかにしています。

アフリカに関しては、<援助>がどれほど彼らの経済を破壊したかが論じられています。日本の補助金が農業などを壊滅状態に追い込んだことは自明ですが、先進国からの「おかわいそうに」という援助金が、アフリカを暗黒大陸のままに押し込めているわけです。

資源などの点からの贈り物も同様です。米国を除くいわゆる資源国が「ダメ国家」であるのに対して、日本をはじめとするほとんどの先進国からは資源が産出しません。

人類は「交換」という手段を通じて自助努力で発展することが可能なのです。

 

<文責:大原浩>

 

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