ウクライナ、米国、中国、ロシア〜⾵の時代の世界情勢〜

 

 

ウクライナ情勢〜⾵の時代の世界情勢〜

2⽉24⽇の侵攻以前、ウクライナ情勢の報道は、⽬先の快楽を満たすだけの情報と、私は判断しておりました。予想に反してウクライナ侵攻は現実となり、政治・経済・国際情勢に⼤きな影響を及ぼしはじめました。

 

理屈では、インフレと戦争は⼀体です。ただ私は、戦争はまだ先の話だと思い込んでいました。未来予測には限界があります。ただ今回、インフレは読めていただけに、開戦の可能性と影響を、真剣に検討するべきでした。

 

戦争の扉は開き、経済関係を越えて世界史が動き始めました。景気は減速しても、インフレは⽌まりません。⼤原浩先⽣(⼈間経済科学研究所・執⾏パートナー)の予測通り、世界は新しいタイプのスタグフレーション(景気後退下の物価上昇)に⼊りました。

 

発展途上国や先進国の低所得層にインフレが直撃、⾷糧・燃料危機、加えて物価⾼から社会不安が広がります。2010年の「アラブの春」も、ロシアの⾷料輸出規制が契機でした。その数倍の規模の動乱が今回は⾒込まれます。

 

いずれはこれも、新時代への過渡期の現象と判明します。ただ現時点で⼈々は、極右・宗教・⺠族などの分かりやすさ、そして単純で強いリーダーを求めます。

 

これは「⾵の時代」の現象と考えております。前の⾵の時代(諸説ありますが1186年〜1405年)は鎌倉時代から南北朝時代へと続きます。律令体制が崩壊する中で、初の本格的な武家政権である鎌倉幕府が成⽴します。

 

この鎌倉幕府も、源⽒の将軍は3代で滅亡、北条⽒による執権政治へと移⾏します。この隙をついて上皇側は執権北条義時の討伐に決起しますが、返り討ちに合います。

 

のちに振り返れば、本格的な武家の時代への過渡期でした。権⼒は並⽴・分散し社会は⼤混乱、この「末法の世」を背景に、鎌倉仏教が誕⽣します。単純な読み替えは危険ですが、並⽴した価値観と権⼒はどれも不安定で、激しく敵味⽅が⼊れ替わる時代でした。

 

「⾵の時代」は占星術⽤語ですが、占星術師は歴史的整合性のある物語を語りません。前の⾵の時代のスピリチュアル⾯での第⼀⼈者は法然上⼈でした。

 

私はご縁を頂いて、法然上⼈が開いた浄⼟宗系寺院の副住職となりました。浄⼟宗とはいっても、聖商(しょうげい)上⼈(浄⼟宗中興の祖)や聖聡(しょうそう)上⼈(浄⼟宗第⼋祖・増上寺開⼭)が五重相伝などの伝法制度を整える以前の「浄⼟宗」です。

 

この時代、真⾔密教の寺院が数多く「浄⼟宗」化しました。現在の浄⼟宗は体制の整備が進み、⽴派な宗派となり、⾵の時代の⾯影は失われました。

 

【情報戦と腐敗】

前回⽇本の⾔論空間の歪(いびつ)さを指摘しました。⽇本の情報空間は⽶国⼀⾊ですが、⽶国ですら「トランプ派」は、ロシア側の情報を拡散します。トランプ⾃⾝も⼀時期、プーチンを「天才」「愛国者」と称賛しました。

 

中国はロシア側情報を報道しますが、共産党内には根強い反対意⾒もあるようです。台湾では国⺠党系のメディアがロシア側の情報を流します。

 

ウクライナは、核兵器の使⽤、世界⼤戦へと発展するリスクがあります。このプーチンの暴発リスクを私達はどう捉えたら良いのでしょうか?正義を貫ぬけば気持ちは良いのですが、ここに仏教の叡智が活かせないものでしょうか?

 

情報戦は⽶国の⽀援を受けたウクライナの圧勝でした。その伏兵は腐敗です。2014年の第⼀次ウクライナ侵攻では、ロシアは周到な準備の上、ウクライナ側の情報インフラを短時間でシャットアウトしました。

 

ロシアは今回の侵攻のために8年間、綿密な準備を進めました。ウクライナ側も臥薪嘗胆、対抗策を練り続けました。

 

ロシアとウクライナは、腐敗のエースと4番バッターです。相⼿の脅威を煽り増額された軍事予算は、オリガルヒや政治家・軍幹部に配分されます。

 

プーチンは⽤意周到に準備を整え、意表を突いて(⽶国は情報を公表しましたが)侵攻を開始しました。ただ天才戦略家プーチンは、敵を欺く前に味⽅を欺いてしまいました。ロシア軍⾃体が、⾃らの情報戦の餌⾷となりました。予想外の開戦で軍備は故障だらけ、膨⼤な軍事予算は雲散霧消した状況でした。

 

徒⼿空拳で進軍するロシア軍の弱さは、世界各国の軍事アナリストの予想をも裏切りました。デフレ期は戦争がありません。軍事予算は腐敗の餌、この腐敗が⼀⽅で、軍部をプーチン⽀持で固めました。

 

【困難な停戦】

ウクライナ側も停戦が難しくなりました。ベテラン喜劇役者は今や国⺠的英雄、国際社会の⽀持も得て、勇ましいセリフに聴衆は拍⼿喝采です。その上ロシア軍の残虐⾏為が暴かれ、「悪魔」とは妥協の余地もありません。

 

舞台では「主役」でも国政を担う「政治家」ではなかったようです。プーチンもここまで負けると妥協の余地がありません。望まない⻑期戦が継続する雲⾏きです。

 

バイデンは想定外の善戦に強気、軍産複合体がデフレの眠りから覚めて、ウクライナは在庫⼀掃の兵器の実験場です。バイデンはプーチン体制の崩壊にまで⾔及し、⽕に油を注ぎます。

 

漁夫の利を取る戦略の中国も、ロシアの弱体化は⼤きなリスク、ロシアへの肩⼊れを継続するしかありません。

 

中国を恐れるインドも、軍事的に依存するロシアと⼿を切れません。そんな中でロシア圏の⾃壊が進展します。

 

アゼルバイジャンがロシアの同盟国アルメニアを攻撃、ロシアに⼆正⾯作戦の余裕はなく、EUが両国の⾸脳会談を仲介しました。

 

「フィンランド化」とまで⾔われ、ロシアの衛星国のように⾒られていたフィンランド、それに⻑い国境を接するスゥエーデンまでNATO加盟への真剣な検討が進みます。

 

そしてロシア版戦艦⼤和と⾔われる巡洋艦「モスクワ」が沈没します。核兵器・エネルギー・⾷糧など武器は豊富ですが、世界の表舞台からのロシアの退場は、もはや避けられない状況です。

 

【欧⽶の結束】

今回のウクライナ侵攻では、⽶国の諜報機関の実⼒が世界に⽰されました。重要な情報が公開され、⽶国の公開情報に沿って、操り⼈形のようにロシアが動きました。⽶国の野党・共和党は「プーチンは何も変わっていない、変わったのは⽶国の⼤統領だ」と⾔います。

 

バイデンが無能で舐められているから、プーチンはウクライナに侵攻した、というロジックのようです。トランプが⼤統領ならウクライナ侵攻はなかった、と⾔われます。プーチンからはウクライナの相談が⼤統領在任中何度かあり、トランプはプーチンの提案を拒否した、という話もあります。ここからは多少陰謀論ですが、トランプはロシア・プーチン派、バイデンは、ウクライナ利権の⽶国代表部です。⽶国新旧トップの代理戦争の様相を呈しております。

 

プーチンはバイデンに騙された、との分析もあります。世界的な半導体不⾜の中で、⽶国産業界の対応が早過ぎる、と⾔われます。バイデンやNATOがプーチンに挑発を続けていた、という説もアチコチで聞かれます。

弱いロシアを⽬の当たりにして、千載⼀遇の好機とバイデンは、⽶国⺠の⾎は流さずに、ロシア解体へと突き進みます。ただ⽶国への⽀持は、欧州以外にはほとんど広がりません。

 

その欧州でも中核のフランスは、ロシア制裁に反対する右派ルペン候補の⽀持が急上昇しております。経済での盟主ドイツは緑の党の賛同まで受け、挙国⼀致で軍事予算の⼤幅増額を決議しました。「ドイツ封じ込め」を基本とする伝統的な欧州秩序が流動化します。

 

近い将来、ドイツは軍事⼤国化し、⽶国とNATOの盟主の座を争い、英国が脱退したEUを率いることになるでしょう。

 

準戦時下にも関わらず⽶国内ですら、バイデン⼤統領の⽀持率は上がりません。中国、ドイツは関係も深い上、ロシア利権を巡っては、いずれも⽶国の強敵です。バイデンはどんな出⼝戦略を描いているのでしょうか?

 

【習近平体制の崩壊の可能性は?】

⽶国は東アジアを⾒る余裕を失い、中国は漁夫の利を得ます。韓国には親⽶政権が誕⽣したものの、アジアでは中国の影響⼒が⽬⽴ちます。

 

ただその中国にも、共産党内の動揺が⾒られます。ウォール・ストリート・ジャーナルは3⽉15⽇、朱鎔基元⾸相(93)が、 習近平の政権3期⽬に反対する意向を⽰したと報じました。私は⽇本の報道を読んだだけで、原⽂は⾒ておりません。

 

習近平の復古主義的な経済政策への批判が中⼼ですが、外交的にはロシアより、経済的繋がりの深い欧⽶を重視すべきだと主張しております。清廉潔⽩で⾏動⼒のある朱鎔基は、中国政財界から尊敬を集める超⼤物、ただ引退して久しく、現在どの程度の⼒があるのか、私には分かりません。経済運営の考え⽅は元来、現政権と対極に位置しますが、習近平の対露偏重外交の失敗が、こうした動きを誘発した可能性も考えられます。

 

以下はバイデンと朱鎔基を繫げる⼤物、ジョージ・ソロスの話です。彼は1⽉31⽇のフーバー研究所主催の講演「冬季五輪前後の中国」で、「中国共産党内の強い反対を踏まえると習近平の3期⽬は難しい」と発⾔しました。論拠は朱鎔基の発⾔と同じです。「中国共産党内の強い反対」の⼀部が⾒えた気がします。

 

昨年11⽉の「歴史決議」でも、江沢⺠政権、胡錦濤政権に対する批判は⼀⾔も盛り込まれませんでした。

 

習近平=プーチン(それにトランプ)連合に対し、中国改⾰開放派=欧⽶諸国(とりわけ⽶国⺠主党・ウォール街)連合という構図も⾒え隠れします。中国は⽶露が相まみえる好ポジションではあるものの、⾜元は盤⽯とも⾔えないようです。⾵の時代の流動化の影響は、世界のすべての⼤国を蝕むのです。

 

◎本レポートはリアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ27【2022年4⽉17⽇:天秤座満⽉】

の文章を大原浩の責任で抜粋・編集したものです。

 

★沼⽥榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)

 

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

 

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を 務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

 〒150-0044 東京都渋⾕区円⼭町5-4

 フィールA渋⾕1402号 isao.numata@5is.co.jp

 

 

 

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