イノベーションと起業家精神(ドラッカー名言集5)

P.F.ドラッカーダイヤモンド社

 

この本は、確か4回〜5回ほど読んでいると思います。同じ本を読んでも、その都度自分自身が成長するおかげで、新たな内容を学ぶことができる(特に名著)というわけです。

ドラッカーは、「マネジメント」を最初に体系づけたことで有名ですが、ビジネスは<マーケティングとイノベーション>で成り立っていることを看破したことの方がむしろ重要だと考えています。

イノベーションは「思い付き」のようなものだと思われがちですが、<マネジメントと同じように体系化し、繰り返し行うことができる>というのが、本書の重要な主張です。

特に大事なのは、「現在の仕事」と「将来の仕事」は両立しないということです。企業を存続させていくためには、「今現在」の収益が必ず必要で、「現在の仕事」抜きには語れません。ですから「現在の仕事」の担当者が、目の前の仕事に全力投球するのは当然ですし、むしろそうすべきなのです。

ところが「イノベーション」を基本とする「将来の仕事」は、今現在1円の利益も生みません。経費はすべて「今現在」の仕事におんぶにだっこで、むしろ彼らにとっては足手まといです。

「現在の仕事」の中に「将来の仕事」を配置する企業が多いのですが、それではイノベーションは成功しないというのがドラッカーの考えです。

「将来の仕事」は生まれたての赤ん坊のようなものだから、働き盛りの企業戦士に預けても十分面倒を見てもらえない。乳母や保母さんのように愛情を注いで育ててくれる人々に預けるべきなのです。

具体的な方法の一つとして、ドラッカーは「将来の仕事」のトップには少なくとも役員クラス(場合によっては社長直轄)を選ぶべきだと言います。

<文責:大原浩>

 

 

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