物流がよ~くわかる本

木村徹秀和システム

<1冊目に読みたいわかりやすい入門書>と表紙に書かれていますが、看板に偽りはありません。業界の門外漢が最初に読む本としては非常に良い出来です。

日本の製造業が高度かつ優秀であることを表現するキーワードの一つに、トヨタの「カンバン方式」がありますが、このカンバン方式における<極めて少量の在庫>は信頼できる有能な物流が無ければ、絶対に維持できません。実際、多くの日本企業が、海外進出の際に日本で取引のある物流企業を現地に呼び寄せています。

ただ、その優秀な日本の物流企業でさえ、これまでは原始的ともいえる人海戦術に頼る部分が多かったことは否定できません。配送トラックの運転手などの不足が騒がれているのも、いまだに<人力>に頼る業界だからです。

しかし、日本の製造業が高度成長時代の<人手不足>を解消するために機械化・ロボット化を急速に推し進め、労働生産性を高めたことにより、製造業大国になったのはよく知られるところです。

同じことが、今物流業界で起こっています。自動運転ばかりが注目されますが、アマゾンや二トリが導入している大規模なピックアップシステムや、着脱式のトラックの荷台、トラック付属のリフトなど、生産性向上のための機械化・ロボット化が急速に進んでいます。

その変貌を遂げる物流業界を知る上での入門書に非常に適した本です。

 

<文責:大原浩>

 

 

 

 

 

 

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