経済は「予想外のつながり」で動く 「ネットワーク理論」で読みとく予測不能な世界の仕組み
ポール・オムロッドダイヤモンド社
小難しくて長ったらしいタイトルの本ですが、あえて単純化すれば<まねっこ戦略と井戸端会議の親分>という内容の本です。
これまでの経済学というのは、<合理的経済人>なる不可思議なものとやたら難解な数式で成り立っていたわけですが、それをほぼ全否定した本です。私も、主流派の経済学は、少なくとも現在の経済の役に立つものでは無いと思います。
なぜ、これまでの経済学が役に立たないのか?それは、経済学をあたかも「科学」であるかのように扱っているからです。しかし、経済を動かしているのは、意志の無い工場、店舗、事務所ではなく、血の通った人間です。
ですから、経済学というのは本来「人間学」であるべきなのです。この点はドラッカーも常々強調してます。
本書では、その人間の(経済)行動を、「他人とのつながり」という視点から鋭く切り取っています。
他人とのつながりにおいての重要な論点は、一種の「キーパーソン」がどのようなパターンの人間同士のつながりにも存在するということです。たとえば、メディアや広告などで大衆に対して情報を流しても、<キーパーソン>を動かさなければ、思うような効果を得られないということです。
これは<まねっこ戦略>にも通じることですが、人間の脳の計算量は限定されていることが主要な原因です。例えば、起きてから寝るまでに目、耳、鼻、皮膚、手、足から入力される情報をすべて、映像、音声などのデータで記録するとしたら、たぶんスーパーコンピュータでも足りないかもしれません。ですから、人間の脳は、ほとんどの情報を捨てることによって成り立っています。
要するに、あらゆることを情報を基に判断するのは人間の脳にとってオーバーワークで、他人を模倣することがほとんどの場合最良の選択なのです。
そのため、世の中にあふれる情報も、信頼のおける他人の意見を参考にするのが合理的なのです。ただし、模倣するかどうかの判断は各個人が行うわけですから、人間が他人の言いなりになると言っているわけではありません。
他人に信頼され模倣される人間が誰なのかを突き止めるのが(マーケティング)戦略の要になるわけですが、本書によれば、その試みは今のところうまくいっていません。
<文責:大原浩>
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