バフェットとポーターに学ぶナンバーワン企業戦略 第2回 ナンバーワン企業には多くの共通項がある

子犬に老犬のトリックを教えることはできない

 「子犬に老犬のトリックを教えることはできない」というのはバフェットの口癖です。彼が率いるバークシャー・ハサウェイに定年が無い(これまでの最高齢の現役は104歳)のも、ビジネスに関する知識や洞察力は年を経るごとに深まるという考えに基づくものです。

これは個人レベルだけの話ではありません。バフェット(バークシャー)の主要な投資先にも「老犬」が目立ちます。コカ・コーラは1892年創業、アメックスは1850年、ウェルズ・ファーゴは1852年、IBMは1911年と100年を優に超える老舗がずらりと並びます。

国としての歴史は米国など足元に及ばないが、資本主義の歴史は米国よりも短い日本で、私が重視するのは1945年を乗り越えているかどうかです。戦争中はもちろんのこと、戦後の混乱期を生き抜いてきた企業が優秀なのは言うまでもありません。また、一度や2度の経営危機を経験しているのも重要なことです。バフェットは「経験から多くのことを学べるが、他人の経験から学んだ方がはるかに簡単だ」と言います。痛い目に会わなくても、他人の失敗から多くのことを学ぶことができるということですが、残念ながら私を含めた凡人はやはり痛い目に会わないと学べません・・・現在ではエクセレントカンパニーの代表ともいえるトヨタ自動車も、1950年に深刻な経営危機に陥り、銀行団の支援で生き延びました(ちなみに、この時逆に融資を回収した三菱銀行と住友銀行は、その後50年間、合併によって取引銀行を内部に取り込むまで、トヨタ自動車との取引ができませんでした)。

もちろん、ITやバイオテクノロジーなど業界そのものが新しい場合には、必ずしもこの原則は当てはまりませんが、IT業界ではIBM、バイオテクノロジーでは老舗の製薬会社が重要なプレイヤーであることも事実です。

会社が愛されているか

最近、「ブラック企業」という言葉をよく聞きます。従業員に過重労働をさせる企業という意味のようですが、そもそも過重労働とはなんでしょうか?例えばベンチャー企業の創業メンバーが1日16時間労働で休日無しというのは決して珍しくありませんが、彼らが不平・不満を言うのは聞いたことがありません。自ら進んで行う仕事では過重労働は基本的に無く、「強制的にやらされている」から過重労働なのです。

例えばハウスメイドが炊事・洗たく・料理などの家事を24時間365日休みなく「やらされる」のは間違いなく過重労働でしょう。しかし、愛する夫や子どものために同じことをするのは決して過重労働ではありません(書いていて自分でも胸が痛いのですが、愛していない夫のために同じことをするのは当然過重労働です)。

第1回で、「会社は家族では無い」と述べましたが、だからこそ、会社は愛される努力をしなければなりません。どれだけ諍いをし、憎しみの感情を抱いていても親子は親子です。しかし、社員に憎しみの感情を抱かれている企業に存在価値はありません。

「ブラック企業」の問題は「セクハラ」問題に似ているところがあります。木村拓也や佐藤浩一のような素敵な上司がプライベートな食事を誘ってもセクハラになることはまずありませんが、私のような普通のオヤジの場合は(残念ながら)即座にアウトです。要は相手(企業・従業員)に愛されているかどうかということです。

学生時代にリクルートでアルバイトをしたことがあります。アルバイトと言っても9時~5時勤務で、スーツを着て営業先を廻り、残業もかなりありました。しかも、学生アルバイトであっても営業ノルマはそれなりにあり、「お通夜」とも称され全員がうなだれて上司の厳しい叱責を受ける営業会議にも参加しました。リクルートの厳しさはそれだけは無く、地獄」ともいえる泊まり込みの幹部研修では、上司を真ん中にして、直属の部下全員が取り囲みます。そして、部下が上司の欠点を重箱の隅をつつくように次々と指摘していきます。要するに人民裁判なのですが、一晩これをやられて泣き出さなかった人間はいないと言われています。

しかし、世間的基準でいえばウルトラ・ブラックなリクルートの退職者でリクルートを悪くいう人間を見たことがありませんし、もちろん私もその一人です。むしろ、彼らはリクルートをこよなく愛し、中途退職者が集まって(リクルートでは定年退職まで勤めずに独立したり転職するのがごく普通)OB会まで組織しています。

なぜ、仕事内容がブラックなリクルートがこれほどまでに愛されるのか?その秘密はここでは語りきれませんが、東京大学の教育学部出身の江副氏が「人間のマネジメント・教育」に関して傑出した才能を持ち、なおかつそれを非常に上手にシステム化したのが大きな要因であるのは間違いありません。

私も座右の銘にしている江副氏の「自ら機会を創りだし、機会によって自らを変えよ」という言葉がそれを如実に示しています。「やらされている」ことはただそれだけで苦痛ですが、自ら進んで挑戦し挑戦することによって自らを高めることが出来るのであれば、大概な「ブラック」なことは平気なはずです。

給料以上に働く

よく、「自分はこれだけしか給料をもらっていないから、それ以上働いたら損だ」と言う人がいますが、そのように考えることこそが最大の損失です。言ってみれば自分自身を奴隷扱いしているということです。

どのようなビジネス・仕事でも必ず次のステージ(ステップ)があります。給料分さえ働いていない人々は論外にしても、給料分だけしか働いていない人々に、次のステップに進むチャンスがどれほど与えられでしょうか?

豊臣秀吉が織田信長の草履を懐で温めて大抜擢された話はあまりにも有名ですが、海外の成功者でも、例えば会社宛ての郵便物の区分け係として採用された後、より良い区分けの方法を提案したり、残業代をもらわなくてもすべての仕事が終わるまで働いたりなどの功績が認められて大抜擢された、というような事例には事欠きません。給料以上に働くのにコストは(実質的に)必要ありませんから、とても効率の良い投資のはずです。

逆に、企業側も「社員に給料以上働いてもらう」努力を怠ってはなりません。もちろん、社員の給料をピンハネしろというわけではありません。社員の仕事の成果に応じて十分な報酬を与えることはモチベーションの上でも重要です。ただし、報酬は「仕事の成果を上げた後に与える」べきで、どこかの国の首相が給料を上げてくれと言ったから賃上げするなどというのはまったくの邪道です。

給料以上に働かせるべきだというのは、裏返せば給料以外の仕事のモチベーションを与えるべきだということです。リクルートの給与水準は低くはありませんが、彼らは札束で横っ面をはじかれて働いているのではありません。会社に所属することや仕事そのものに喜びを感じていることが、エネルギーの源泉です。

また、高い給料が欲しいだけの社員は、給料が高い企業を渡り歩きますから、企業の本当の戦力になりません。要するに傭兵です。そうでは無く、会社を愛し給料以上に働くことを喜びとする社員がどれだけいるのかが、その会社の基本的な競争力を左右します。

<文責:大原浩>

★産業新潮社(「産業新潮」)HP

http://sangyoshincho.world.coocan.jp/

 

 

 

 

 

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