今後のビットコインに過大な期待はやめるべきだ

ビットコインなどの暗号資産に逆風が吹いている。4月半ばに6万4000ドルの値をつけていたビットコインは、6月22日についに3万ドルを割り込んだ。2ヶ月で半値以下に下がった形である。

6月10日に金融機関の国際ルールを定めるバーゼル銀行監督委員会は、ビットコインのような裏付けがなく価格が乱高下する暗号資産に対して、リスクウエート1250%という厳しい算定基準の導入を決めた。詳しい説明は避けるが、国際取引ができるための自己資本比率8%を上回るようにしようとした場合に、ビットコインを持つことにメリットは全くない。したがって金融機関がビットコインを保有することは今後は考えにくくなった。

またこれまでビットコインのマイニングの中心地であった中国において、ビットコインのマイニングと取引がともに禁止された。ビットコインのマイニングは全世界の65%が中国国内で行われていたと言われている。5月21日に中国国務院金融安定化委員会で「ビットコインのマイニングと取引を取り締まる計画」について議論がなされ、取締りが今後開始されることがアナウンスされた。これを受けてマイニングが盛んだった新疆ウイグル自治区、内モンゴル自治区、青海省では相次いでマイニングの禁止が発表されたのである。

マイニングの禁止はCO2の排出量の削減のためだと公式には言われているが、それは表面的な建前であろう。オーストラリア産の石炭の輸入制限を行っていることから中国では電力不足が発生しており、貴重な電力をマイニングのために使うなどもってのほかだという判断があったのだろうと思われる。また、ビットコインを用いて海外に資産を移す動きも習近平指導部は気に入らなかったのかもしれない。

従来の国際決済システムであるSWIFTを通じての資金移動は、時間も手間も費用もかかる不便なものであった。この点で暗号資産の利便性は特別に大きいものがある。

加えてマネーロンダリングしたい立場からすれば、SWIFTで動きを完全に掴まれてしまうのは避けたいところがあり、この点でビットコインなどの暗号資産は極めて魅力的なものであった。だが、暗号資産を使っても資金の流れは抑えられてしまう時代に突入したようだ。

アメリカ最大のパイプラインを運営するコロニアル・パイプラインはランサムウェア(正常な動きを妨げるソフトウェアで、身代金を支払うと解除方法が伝えられる)による攻撃を受け、パイプラインの稼働を一時的に停止せざるをえなくなった。この問題の解決のために、コロニアル・パイプラインはランサムウェアに対する身代金をビットコインを使って支払った(75ビットコイン)。ところが後日、FBIは身代金の85%にあたる63.7ビットコイン(BTC)を回収することに成功したと報道された。これは送金されたアドレスの秘密鍵をアメリカ司法省が押収できたことを意味する。つまり、これまでは身元の特定はできないと思われていたが、そうではない時代に入ったようなのである。このことはビットコインの魅力を大きく引き下げることになった。

ちなみにこのランサムウェアの開発を行っていたダークサイドは、ブログ、支払いサーバ、攻撃サーバ、管理パネルなどへのアクセスを失い、支払いサーバに残っていた資金が未知のアドレスに払い出されたとし、サービスを停止することを発表した。完全敗北である。

ところで一方、エルサルバドルではビットコインが法定通貨の一部として認められることになった。一体どうしてと思うだろうが、そこには同国ならではの事情がある。

エルサルバドルでは窃盗、恐喝、誘拐、強盗など、現金を対象とした犯罪が横行している。さらに15歳以上の人口の3割しか銀行口座を持っていない。加えてアメリカなどへの移民労働者も多い。彼らから自国への送金がスムーズに行われるためには、デジタル化した暗号資産の必要度が高いのである。ちなみに移民労働者から国内への送金額は、現在でもGDPの2割に相当する膨大な金額だと言われている。

この送金がデジタル資産を用いて手間もコストも掛からずに行われるようになるとすれば、そのメリットは非常に大きいと、エルサルバドルは考えたわけだ。

発展途上国の中にはエルサルバドルのような状況の国は多い。こうした国がエルサルバドルの後を追うようにしてビットコインを法定通貨に組み込むようなことも、今後行われていくかもしれない。

だが、恐らく数年後にはデジタルドルが生み出され、デジタルドルで送金ができる時代が到来しているはずである。こうなると、こうした国でわざわざ価格変動の大きいビットコインを使う必要性はなくなっていく。

さらに言えば、エルサルバドルでのビットコインの法定通貨化には、IMFや世界銀行が厳しい姿勢を見せたことも指摘しておきたい。エルサルバドルから技術支援を求められた世界銀行はビットコインの「透明性と地球環境の問題」を理由にその支援を断った。透明性の薄いビットコインは犯罪資金の移動に使われやすい。巨額資金が動いていれば、捜査当局は全力を挙げて秘密鍵を探し出すことにエネルギーを向けるかもしれないが、少額の取引にまでエネルギーを向けるのは現実的ではないだろう。さらにマイニングを要求するビットコインは大量の消費電力を必要とし、それは地球環境上大きな問題だという認識を、世界銀行は持っているわけだ。

こうなると、デジタルドルがやがて普及する中では、ビットコインの魅力はさらに失われることになる。

ビットコインは今後も乱高下を続けることになるだろうが、これまでのように持っていれば確実に上がっていくということは期待できなくなったのではないか。むしろ長期的には低迷する可能性も高いと見るべきではないだろうか。

★朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。
それでも習近平が中国経済を崩壊させる (WAC BUNKO 334) 新書(https://www.amazon.co.jp/dp/4898318347/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_EHE0HDC426590NKTX59H)

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