感染症である「情報糖尿病」の治療法

【情報のセンターピン】
1⽉28⽇(⾦)に興和サイン株式会社の主催で、国際投資アナリストの⼤原先⽣とご⼀緒させて頂き「インフレとスタグフレーション」をテーマに経済講演会を開催しました。

⼤原先⽣は「⽇本以外は全部沈没」と笑いを誘われ、私は「来年の今頃は⽶中協調」と意外感を狙いました。時節柄ウクライナ情勢の話題で盛り上がりました。講演後も皆様から、いろいろな情報を頂きました。メディアも今は、この話題で溢れております。実は⼤原先⽣が触れられたので、私もそれを受けてコメントしました。私が先にお話をしていれば、この話題には触れなかったかもしれません。

⼤問題ではあるのですが、私の経済予測の重要ファクターではありませんでした。コメントを求められれば私は、ウクライナでの戦争は回避できるだろう、と予測したと思います。ただどちらも引くに引けない状況ではありますし、偶発的な開戦が無いとは⾔えません。

⼤きな流れで⾒ると、緊張は緩和する⽅向に進むと感じております。これ以上緊張が⾼まると、インフレがコントロールの難しいステージにまで進展し、誰もが望まない難局に突⼊します。ウクライナ情勢はインフレの程度と速度を変えるに過ぎません。リスクはほぼ相場に織り込まれております。

⽇本でのビジネスが情報分析の⽬的でしたら、予測不能な突発事態にどう対処するべきか、ここに課題は絞られそうです。

私の経済分析は、20世紀の株屋(証券会社)の⽅法論です。まずその時代の資本市場を動かす最重要ファクター(私は「センターピン」と呼びます!)を探します。

このセンターピンに分析を集中します。⼤和証券に⼊社したのは1989年、情報は限られ、しかも有料でした。必要な情報を⾒極めないと時間とコストが無駄になりました。今ならネットで瞬時に取れる情報を、毎週書店などを⾛り回り、購⼊しました。

投資情報部という専⾨部署に当時、天才的な先輩がいらして、その⽅のコメントを参考にセンターピンを探しました。⼀度発⾒しても、センターピンは変化します。昨⽇までは重要な情報も、本⽇は紙切れになる場合もあります。相場を⼤きく外すのは、センターピンを⾒誤っているときです。

「休むも相場」とも⾔いますが、頭を冷やして、株式投資を休むべき時期なのです。28⽇に来場頂いた⽅には、現時点での私なりのセンターピンをご披露いたしました。まだ⼀ヶ⽉も経過しておりませんが、少なくともこの期間は、株式相場は百戦百勝だったはずです。ただご披露したセンターピンも、いずれは変化します。

【情報糖尿病とは】
経済情勢を読みにくい時期は、ユダヤとかロスチャイルドといった陰謀論が駆け巡ります。私が⾒る限り、⽇本が絡む為替や株価で、こうした要素がセンターピンとして機能したことはありません。

ただこれは資本市場分析のケースで、分析の⽬的が異なればセンターピンも変わります。無駄な情報とは限りません。現代は1億総情報通の時代、⾼品質な情報が安価で⼤量に流通します。情報⾃体が顧客に媚びて、専⾨化、エンターテインメント化、そして過激化します。

⼈々は情報に⽬先の快楽を求め、情報分析の⽬的や優先順位を忘れがちになります。情報の質と量が⾶躍的に向上したにも関わらず、情報分析の精度は上がりません。私はこれを「情報糖尿病」と呼んでおります。

⼀種の⽣活習慣病です。本⼈が楽しんでいるなら、⽬くじらを⽴てる話ではありません。ただ⺠主主義社会で「病⼈」集団が政治的な意思決定を下す、というのも健全ではありません。

こういう社会はこれで、結構楽しいのかもしれません。⾷事に快楽を求め、⾷事も⼈々の快楽に媚びて、現代の糖尿病は不治の病となりました。情報の分野でも、⽬的と優先順位を明確にし、粗⾷に耐え中⻑期的な視点を持たないと、すぐに快楽情報に取り込まれてしまいます。

東京⼤学医学部の中川恵⼀准教授は、ご⾃⾝もがん患者を経験された、がん治療のスペシャリストの⼀⼈です。

「⾼学歴、⾼所得者ほど怪しげな代替治療を選択する」と警笛を鳴らします。乳がんで死亡したアナウンサー(⼩林⿇央さんと思われます)、膵臓がんで亡くなったスティーブ・ジョブズ、彼らのケースは標準治療で治療できた可能性が⾼かった、といいます。

逆に考えれば「情報感度が⾼い⼈ほど、⾼学歴で⾼所得を得ている」とも⾔えるのかもしれません。

⾎糖値を適切にコントロールしながら快楽⾷に⾝を委ねる⼈⽣、これも悪くはありません。快楽情報をどう活⽤して、その上で全体のバランスを如何にコントロールするか、そこが問題なのでしょう。快楽情報は⼈⽣⽬的には寄与しませんが、知ることで快感と優越感を味わえます。標準的な情報とは異なるほど、快楽情報を他⼈に拡散してみたくなります。

情報糖尿病は伝染するのです。「無知な⼤衆」は社会のワクチン、歴史を紐解くと、案外正しい判断を下しております。ただ情報糖尿病に感染してお⾦持ちになれるなら、それもアリかもしれません。それならそれで、情報糖尿病をコントロールする技術を磨きたいものです。

【⽇経新聞を読む】
最近読んだ情報分析の本に「⼤⼿の新聞などのメディアは偏向しており読むべきではない」とありました。

新聞の発⾏部数は毎年減っており、こうした意⾒が現代では多数派なのでしょう。You Tubeを⾒ると、⽇経新聞すら読まないで経済を語る動画も多いです。標準では無い情報が、むしろ求められているのでしょう。⾒⽅次第では、⽇経新聞の記事より深い場合もあります。

私も分野を定め、そうした情報も参考にしております。⼀流の経営者の多くは、若いIT系の経営者も含め、今も毎朝、複数の紙の新聞に⽬を通します。⽇経デジタルではなく、ITを使う場合でも、紙⾯がそのまま読めるデバイス、プログラムを使います。電⾞の中で読むのはさすがに恥ずかしいと⾔いますが、私は電⾞の中でも新聞を読みます。

ではなぜ時代の潮流に反してまで⽇経新聞を読むのでしょうか?それは経済情報のセンターピンの妥当性を⽇々判断するためです。全体像をチェックしているのです。

⽇経新聞は、⽇本の財界⾸脳が主要な読者です。財界の興味・関⼼に即して編集されます。⽇経の報道は中国に⽢い、との批判を聞きます。逆に考えればこのぐらいのスタンスが、財界の最⼤公約数的な意⾒だ、と判断できます。これも有益な情報です。

株価が下がる中、⼤原先⽣や私が、⽇本経済に強気なのも、製造業の増益、最⾼益更新の記事が、毎⽇のように⽇経の紙⾯を賑わしているからです。

⽇経デジタルなどで、興味のある分野の記事だけ集めていては、⽇本経済がインフレ型に突⼊している事実には、私も気付けなかったと思います。⽇本に関するマクロ⾯での数字は、私達が最初にインフレを指摘した時点では、動いてはおりませんでした。情報が遅くても、全体像を⾒誤らなければ、相場での失敗はかなり防げます。

【情報ファスティング】
私の場合、本物の糖尿病にもファスティング(断⾷)が有効でした。情報糖尿病にも情報ファスティングが有効です。ファスティングは「メスのいらない外科⼿術」と⾔われます。

抜本的な効果が期待できますが、途中でやめるとただ⾟いだけ、場合によっては逆効果になるケースもあります。ここは外科⼿術系のトレーニングの怖いところです。私は年に1回1週間だけですが、情報ファスティングをやります。その間は動画と書籍(活字)を⼀切⾒ません。毎朝ファスティング専⽤ノートに3ページ、思いつくままに⼼の中⾝を吐き出します。

有名なトレーニング⽅法ですので、経験をされている⽅も多いと思います。「ずっとやりたかったことを、やりなさい(ジュリア・キャメロン著・サンマーク出版)」に出てきます。私はこの著者のシリーズが好きです。

⼀般論ですが、情報糖尿病患者は、新型コロナ関連とウクライナ関連の情報が⼤好きです。ウィルス学や地政学の専⾨家でも無いのに、こうした情報を細かく追いかけます。こうした情報が、短期的には快楽をもたらす⼀⽅で、ご⾃⾝が本来お持ちになっている創造性を抑え込んでしまいます。

⼀時的にせよ快楽情報をシャットアウトすると、錆びついていた⾃分本来の情報回路が動き始めます。⾃分本来の情報回路を錆びつかせたまま、途中で快楽情報に負けてしまうと、次のファスティングはもっと苦しくなります。

内科系のメソッドは、1⽇実⾏すれば1⽇の仏、副反応も少ないですが、外科⼿術系のメソッドは、効果も劇的な⼀⽅で、⼀定のところまではやり切らないと、副反応が強く出ます。お腹を開いてはみたが、⼤変そうなのでそこで放置した、なんて⼿術はありえない訳です。

投資はご⾃⾝の情報糖尿病の状態を知る、格好のツールです。

ある程度の基礎知識が無いと、さすがに儲からないとは思いますが、あとは本質的な情報と、⽬先の快楽情報を⾒極める⽬が重要です。

私もかつては、求められれば投資の⽅法論を全て話していました。ただ⾒ていると、特に損が出ているような場合、その苦しみから⽬をそらそうと、⼈間はどんどん快楽情報に⾛ります。

⼤きな借⾦を抱えた経営者が、⼀発逆転を狙い、⼤きな話を追いかける⼼理状況です。実は私も、他⼈の理論で投資をすると、快楽情報に負けて⾃滅するケースが多いのです。本質を⾒極めるには、失敗の体験が重要なのでしょう。

失敗した時に、現実と向き合い学ぶ⼈は、失敗が⼤きな財産になります。また投資の場合、不可抗⼒の失敗もあります。プロセスが適切と確認できたら、失敗を許容し⼿放す技術も、情報糖尿病対策には有効です。

プロセスはコントロールできますが、結果を完全にコントロールすることはできません。センターピンを狙えたからといって、それで全てのピンが倒れる訳では無いのです。こんな些細な話でも、⼈は快楽情報に取り込まれてしまうのです。

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ24【2022年2⽉17⽇:獅⼦座満⽉】の文章を、大原浩の責任により、抜粋編集したものです。

★沼⽥ 榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企 業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社
〒150-0044 東京都渋⾕区円⼭町5-4
  isao.numata@5is.co.jp

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