研究レポート:中国の原油輸入はどの程度水増しされているのか
★人間経済科学研究所 研究レポート
中国の原油輸入はどの程度水増しされているのか
中国政府発表の統計から算定すると、同国の原油純輸入量と国内産油量の合計である供給から需要の原油処理量を差し引いた需給バランスは、今年1~5月の累計で2,340万トン供給過剰を示します。昨年1年間の累計余剰は4,460万トンでした。まれに処理量が供給量を上回る月もありますが、毎月のバランスを2006年の初めから累積すると2億7千万トンの余剰に上ります。
しかし、中国の戦略石油備蓄は国家統計局によると2017年の半ばで3,773万トンに過ぎません。それでも前年の同期から448万トン増加しており、国際エネルギー機関 (IEA) の推定では2017年末の戦略備蓄は3,920万トンとなっています。
一方、新華社による2017年年末の民間の商業原油在庫は2,700万トン、直近今年の4月末の数字は2,740万トンと推定されます。新華社による中国の商業原油在庫は2010年代に入って2,500万~3,500万トンの間で推移しており、ピークをつけた2014年9月以降は減少傾向にあります。製品在庫も季節的な変動を繰り返すだけで大きくは増えていません。
つまり、統計上算定される余剰原油は戦略備蓄や商業備蓄の増加量よりも明らかに大きく、どこに吸収されているかが謎です。中国の統計数値は信憑性が低いと言われますが、それにしても乖離が大きいと思われます。
このところ政府統計で1か月あたり5,000トンに上る原油処理量は、一定規模以上の企業からの報告数値の合計です。全国有企業と年間売上高500万元以上の民間企業が対象ということですが、石油精製を行う企業が年商8,500万円を下回るということは考えにくく、すべてが集計されているのでしょう。また、生産量を実際より過小に報告するという意味もないと思われます。
推定される中国の戦略石油備蓄と商業石油備蓄の合計は現在9,000万トン弱と見られ、最近の国内石油消費量に対しては55日分程度となります。OECD が基準としている90日分にはまだまだ届きませんが、1か月分に満たない備蓄量しかなかった10年前から消費量は倍増していることを思えば格段に改善しています。
これに対し、上述の需給バランスの累計を基に考えると170日分に近い備蓄が積み上がったことになりますが、それ程の貯蔵施設を準備することは不可能でしょう。輸入が水増しして報告されていると考えるのが妥当と思われます。推定備蓄量の乖離から考えて、中国の実際の原油輸入量は貿易統計の数値より1割程度少ないのでしょう。同国の国際市場における影響力も、その分割り引いて考える必要があります。
<人間経済科学研究所:研究パートナー>
藤原 相禅 (ふじわら そうぜん)
個人投資家
広島大学文学部卒業
日本大学大学院で経済学修士
地方新聞記者、中国・東南アジア市場での先物トレーダーを経て、米国系経済通信社で商品市況を担当。子育てのため一家でニュージーランドに移住。台湾出身の妻の実家が営む健康食品メーカーの経営に参画。
商品相場歴30年余。2010年から原油相場ブログ「油を売る日々 (https://ameblo.jp/sozen22/)」を運営。
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