「檀家」から「信徒」へ

 

お寺の損益分岐点は檀家数で300軒と⾔われます。

 

これをクリアする寺院は12.2%(2017年浄⼟宗宗務調査)、他宗派でも傾向は同じだと想定すると、87.8%の寺院は本業では⽣活が成り⽴たない兼業寺院です。

 

檀家300軒で護持費を年間1万円、年間葬儀件数は檀家数の約6%(18件)、年間の法要

回数は約30%(約90件)と想定すると、住職の年収は400万円前後と⾒られます。

 

地⽅でしたら⽣活は成り⽴ちますが、伽藍の補修などは夢のまた夢、⾃らの後継者も含め、⼈の育成にまでは⼿が回りません。

 

こうした機能は本⼭に集約され、地⽅寺院のコンテンツはますます貧困化します。

 

お寺は檀家制度の下、ご先祖様の霊を祀り、祖先との縦のつながり、村落内の横のつながりの結節点として、これまで地域社会に多⼤な貢献を果たしてきました。少なくともお寺の側には、そのような⾃負があることと思います。

 

平成・令和の世になると⼩規模な直葬、家族葬が市⺠権を得て、地域社会の崩壊・過疎化も進み、現在のお寺の経営は、さらに苦しくなっていることでしょう。

 

檀家はお寺の⽣命線、ご先祖様の御霊を⼈質に、檀家と寺院、もしくは寺院同⼠の仁義なき戦いが、今も各地で勃発していると⾔われます。

 

また檀家制度には、個々⼈の宗教観が⼊り込む余地がありません。

 

2007年に檀家制度からの離脱を表明した曹洞宗⾒性院(埼⽟県熊⾕市)は、約400軒の「檀家」を廃⽌し、すべて「信徒」に変更しました。

 

お寺の収⽀の公開にも踏み切りますが、仏教界の⾵当たりも相当強かったようです。宝瑞院も⼀時期「デジタル檀家」という⾔葉を使いました。若者にも分かりやすい、と考えました。

 

ただ檀家制度はお釈迦様の教えとは何の関係もありません。

 

江⼾幕府の寺請制度とつながり、明治⺠法に引き継がれる「家」制度も、戦後の⽇本国憲法の施⾏で、制度上の基盤をすべて失いました。

 

江⼾期に始まる儒学者・神道学者・国学者による仏教批判、そして明治政府の神仏分離令に伴う混乱(廃仏毀釈)は、江⼾幕府の寺請制度・檀家制度への⺠衆の不満に起因していたことも、仏教に携わる私たちは、知っておくべきでしょう。

 

ただ地⽅には現在も、檀家制度が機能するケースが⾒られます。過疎化が進む中で、檀家制度が社会の紐帯を担う状況もあるのでしょう。それを⼀般論で批判するのはおかしい話です。

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ37【2023年5⽉号】

を大原浩の責任で編集したものです。

 

★沼⽥榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)、 人間経済科学研究所フェロー

 

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

 

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

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