お金の密教

お金の密教

9月29日、岸田文雄氏が自民党新総裁に就任、10月4日に第100代の内閣総理大臣に選出されました。発表された党・内閣の布陣を眺め、私は誕生時の習近平政権を思い起こしました。党内を仕切る安倍氏(≒江沢民)の油断を誘い、岸田(≒習近平)政権が誕生したようにも見えます。マスコミは安倍傀儡政権と見ます。傀儡のハトにせよ、謀略のハトにせよ、はたまた両睨みのハトにせよ、このハトが日本の将来を担います。

新首相の公約は「成長と分配の好循環」です。日本の経済成長は、諸外国の後塵を拝します。経済成長が鈍化する中で貧富の差が拡大、株価も割安に放置されております。「日本の消費者は貧しくて商売にならない」との声が聞かれ、「安い日本」を目当てに、コロナ前は中国人が殺到しました。日本人は幻想を追い、貧しさに麻痺しているように見えます。成長戦略は既得権益を敵に回し、分配戦略は全高所得者層を敵に回します。このハトからは、そんな覚悟も垣間見えます。

新政権発足を祝し、今回はお金の話です。「幸福は金銭では測れない」のも事実ですが、今の日本に不足しているのは、実はお金の豊かさなのです。そこで一昨年、「お金の密教」講座を開催いたしましたが、基本的な考え方を2点、ここでおさらいしておきたいと思います。

1 点目、お金は稼ぐことより貯めることが重要です。お金は信用です。お金持ちとは資産を持つ人、年収が高い人ではありません。資産があれば、多くの情報が集まります。信用と情報を持つ仲間に囲まれます。時間を味方につけ、時間の経過とともにビジネスの優位性が高まります。

お金を使うと、その時点での便益は高まります。ただ稼ぐ能力はあっても、懐を狙う営業マンが集まり、優良な人脈や情報は寄り付きません。5年、10年すると、これが大きな差になります。誰もが生涯で、一度や二度はチャンスに巡り合いますが、お金が無ければ資金調達からのスタート、機動的な勝負が難しく、チャンスを活かし切れません。
チャンスと巡り会えても、リスクを取ることすら許されないのです!

私が投資をする際に見るのは、経営者のお金に対する優先順位です。お金より優先順位の高い項目が多い経営者は、お金の使い道が多く、会社にお金が貯まりません。本音では、お金はどうでも良いので、思いつき程度のアイデアで、お金のプレゼンを仕掛けます。投資家には、何の学びも感動もありません。投資家は例外なく、お金の優先順位が高い人たちです。この点が噛み合わないと、心もお金も動きません。

「あとはお金だけ」いうプレゼンを、私は何度も聞きました。ただ投資家から見れば、お金が無い経営者は、何も無いのと一緒です。人脈を誇示する経営者もいます。お金以外の優先順位で繋がっている人脈は、ビジネスでは全く使えません。日本人は心の問題を語るのが好きですが、お金(≒信用)の重要性も少しは再認識して欲しいものです。

2点目は「チーム」です。特にベンチャー投資は「経営チーム」が対象です。ビジネスモデルは、脇役です。私の場合は経営者の得意分野、思考能力、それに方向性を見るに過ぎません。この30年、年間50件以上のプレゼンを受けましたが、お聞きしたビジネスモデルが、3年後にも通用しているケースは皆無です。私が投資した先も、かなり上場しましたが、当初のプレゼン通りの上場事例はありません。ベンチャー経営の本質はイノベーション、変われなければ成長はありません。投資家は、環境変化をイノベーションのチャンスに展開できる、柔軟な経営チームを探しているのです。

日本人は元来、高い組織構築力を持ちます。経営者が凡庸でも、優秀な部下が組織を支えます。逆に考えれば、経営者自体の能力はさほど高くはありません。ただ近年、組織構築力でも遅れが目立ちます。日本の中小企業の組織は、経営者のカリスマ性が支えます。その上で経営理念やミッションを徹底する、といった組織です。経営者の限界を、組織が乗り越えられません。1+1が2を超えられないのです。

米中では従業員がイノベーションを起こすシステム構築が試みられ、数々の成功事例が出始めております。新時代の肝は、従業員の魂をも開く組織です。日本は逆に、「風の時代」の中、魂を開くための個人事業化が進展します。日本の組織に魅力が乏しいからでしょう。これでは貧しさを克服できません。

最近「NO RULES(日本経済新聞出版)」を読んで、彼我の差に衝撃を受けました。この本には Netflix (ネットフリックス) の経営・人事が詳細に描かれ、日経新聞で「経営者が読むべき1冊」と激賞されました。私はむしろ、スピリチュアルな方々にも手に取って頂きたい書籍です。特殊な会社なので、具体的な方法論はあまり参考になりません。近年のベンチャー投資は、秀逸な組織構築能力に対して行われます。ご自身の組織をこのレベルにまで磨き上げれば、NPO のような非営利の組織であっても、世界中からお金が殺到すること、間違いありません。

南無大師遍照金剛 沼田 榮昭 拝

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ16【2021年10月6日:天秤座新月】の文章を、大原浩の責任により、抜粋編集したものです。

★南無大師遍照金剛 沼田 榮昭 
沼田功

ファイブアイズ・ネットワークス株式会社 代表取締役
日本証券アナリスト協会検定会員
復旦大学日本研究センター客員研究員

1964年 東京都練馬区に生まれる。
1988年 大和証券株式会社入社(本店第二営業部池袋支店配属)。
2000年 ファイブアイズ・ネットワークス株式会社設立 代表取締役(現任)
株式会社サイバーエージェント 監査役(現在は取締役監査等委員)。
2013年 徳石忠源(上海)投資管理有限公司(リンキンオリエント)
マネージング ディレクター(現任)、その他2社未公開会社の社外取締役を兼務。

著書 「IPO(株式公開)入門」(オーエス出版社)。

生涯100社上場を目指し、サイバーエージェント、楽天をはじめ現在70社を更新中。

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