中年よ「やんちゃ」であれ!

 

Boys, be ambitious.〜男の⼦よ、「やんちゃ」であれ!〜

1877年「男の⼦よ、やんちゃであれ!」と⾔ったのは、札幌農学校(後の北海道⼤学)の教頭を辞し帰国するクラーク博⼠です。

 

明治の⽇本男児達は直⽴不動で拝聴したのでしょう。「少年よ、⼤志を抱け!」と訳されますが、辞書でambitiousは 「野⼼」、「⼤志」というよりは「やんちゃ」です。帝国⼤学の権威に忖度したのでしょうか。

 

これに続けて「⼤志とは、⾦銭、我欲のためにではなく、また、⼈呼んで名声という空しいもののためであってはならない。⼈間として当然持つべきもののために⼤志をもて!」と⾔ったと伝えられます。ただこれは後世の創作だそうです。近代⽇本の微笑ましい情報操作です。

 

 

 Be ambitious(やんちゃであれ)は私も好きな⾔葉です。 男性に限らず⼥性も、やんちゃな⼈が好きです。仏教の 祖師達もやんちゃでした。

 

お釈迦様は宗教的権威に⽀えられたカースト制度に異を唱えました。弘法⼤師も法然 上⼈もやんちゃでした。彼らは「流れを変える⼈」でした。

 

その後の諸賢達は「流れを繫ぐ⼈」です。彼らの教えは体系化され整備が進みました。教えそのものよりも、⼈間性の相違が⼤きいのかもしれません。

 

実は「Boys, be ambitious like this old man(男の⼦よ、 やんちゃであれ、この⽼⼈のように)」と⾔ったと⾔われます。Boysは聴衆である学⽣への呼びかけ、this old manはクラーク博⼠ご⾃⾝です。50歳を超えた頃の発 ⾔です。現代なら「⽼⼈」という年齢ではありません。

 

⽣涯にわたりambitiousであるのが理想ですが、せめて50歳を過ぎたら私もambitiousでありたいものです。

 

【50歳過ぎの林住期(りんじゅうき)】

インドには四住期(しじゅうき)という、⼈⽣を4つの時期に区切る考え⽅があります。五⽊寛之⽒の著書「林住期」で、この考え⽅は⽇本にも広がりました。

 

25 歳までが学⽣期(がくしょうき)、師や先輩⽅の指導を仰ぎ、⼼⾝を鍛え抜く時期 です。50歳(あるいは定年)までが家住期(かじゅうき)、社会と家族のために バリバリ働く時期です。50歳〜75歳が林住期、社会の義務や家族から離れ、⾃分がやりたいことに打ち込む時期です。75歳以上は遊⾏期(ゆぎょうき)、⼈⽣の終焉に向けた終活の時期です。

 

若者も起業し定年延⻑で⽼⼈も働く現代、家住期が肥⼤化しております。周囲の思惑や責任に流されるままでは、林住期が孤独と失意の期間になりかねません。

 

かつ ては60歳で定年を迎え、70歳前後で死を迎えました。今は⼈⽣100年時代、 家住期の後にも⻑い⼈⽣が待っております。

 

法然上⼈が極楽浄⼟に救いを求めた鎌 倉時代、⽇本⼈の平均年齢は24歳でした。現代では極楽浄⼟に⾏く前に、⽣甲斐を失い認知症に悩まされ、体が動きません。現代仏教の課題は林住期です。

 

⼀⽅で 林住期は、社会や家庭のしがらみも薄まり、思い切った⾃分らしい活動に最適な時期です。私も紫雲⼭寶瑞院の再建に参加し、体⼒が衰え寝たきりになっても社会と のつながりを保ちやすい、Time Waverの学習・実践を開始しました。

 

収⼊や社会的 評価を気にせず、⼼の声に従って⽣きる時期とも⾔えます。まさに「中年よ、やんちゃであれ」です。

 

私が林住期を意識したのは、昨年12⽉、サイバーエージェントの役員を退任する57歳の折でした。以前から55歳で、ビジネスを卒業する計画でしたが、結局2年遅れました。

 

「ビジネスか仏教か」という⼆者択⼀もやめました。仏教(2階)と現世(1階)との「階段」を⽬ 指すことにしました。

 

私の場合は50歳を過ぎた頃から、 お⾦儲けのモチベーションが急減しました。お⾦が儲かりそうでも、魂が震えないと、体が動かなくなりました。現在でもお⾦は、私の⼈⽣のテーマですが、稼ぎ⽅より使い⽅へと興味が移りました。

 

死後の世界でお⾦は使えません。より魂を震わせるために、現世でお⾦を有効活⽤したい、そう思うようになりました。

 

お⾦以上に変わったのは時間の感覚です。死後には現世の時間も引き継げません。それどころか現世ですら、林住期に ⼊り50歳をすぎると、本⽇できたことが、明⽇にはできなくなります。同じ時間が流れている訳ではないのです。

 

50歳を越えると私たち は、毎⽇少しづつ、分割して死を体験します。1分1秒が「南無阿弥陀仏」、分割して極楽浄⼟を⽬指すのです。⼤本⼭増上寺の法主でもあり、仏教⼤学理事⻑も努めた直⽊賞作家の寺内⼤吉⽒は、1997年の⼭折哲雄⽒との対談で、「私の中の教養みたいなものが、死後の世界はないと思わせる」と発⾔しました。

 

この対談は朝⽇新聞に掲載されました。浄⼟宗僧侶の、浄⼟の実在を否定したかのような発⾔が、 浄⼟宗内で問題になったと⾔われます。この問題意識には⼤いに共感できます。

 

私は今、両親の介護に携わっております。だんだん不⾃由になる両親を⾒ていると、 今できることは今やろうと改めて感じます。いかに健康に留意しても、不⽼⻑寿という訳にはいきません。極楽浄⼟は重要ですが、鎌倉時代の24歳の死は、現代で は分割されて訪れるのです。私はそう考えます。

 

この原理、⼈⽣の全盛期である家住期にも当てはまりそうです。家住期ならではの 「魂の震え」に、集中するべき時期なのでしょう。四住期はそれぞれの、魂が震え る原理が異なるのでしょう。

 

今や私は林住期、お⾦はあっても使い道が減ります。 豪遊は体⼒的に難しくなります。お⾦を払ってでも家に早く帰りたい、そう思う会⾷も多くなりました。新たな冒険に臆病になります。友⼈も⾼齢化して、話題がジジ臭くつまらないです。

 

⼀⽅で若い世代との時間は貴重です。私がambitiousであることが、関係を築くコツだと思います。お⾦の使い道が無限に広がるambitiousな若者に、お⾦も時間も、もっと投資をしたいです。

 

他⼈の⼈⽣に⼝を挟むのは野暮だと思います。それでももし質問して頂けるなら、気を使って回り道をする時間は無 駄、隠し事なくストレートにお伝えしたいと考えております。

 

【⽣涯計画表】

私が修⾏したお寺(代々⽊⼋幡・⼤⽇寺)では、それぞれが「⽣涯計画表」を作成 しました。

 

まずは⾃分や周囲の⼈たちの死期を勝⼿に想定します。私は2006年 42歳からスタートし、2044年80歳で死亡する計画でした。

 

将来の話は鉛筆 で、時間の経過につれて確定した内容はボールペンで記載します。2011年2⽉ (46歳)まではボールペンでの記載があります。この頃はまだ、お寺に通っていたのでしょう。60歳の時点で1億円の資産を持ちたいと想定しましたが、当時は どうやっても計算が合わず、何⽇も悩んだことを思い出します。

 

ambitiousならお⾦はついて来るよ、と当時の⾃分に教えてあげたい気分になりました。55歳で仕事をすべて辞めて、僧侶に専念するシナリオでした。それ以降の⽣涯計画表はスカスカですが、70歳からは「来世への準備」とあります。

 

四住期の原理にも適合して います。想定寿命を少し延ばして、じっくりと再検討してみたいものです。皆様に も⼈⽣の⼤きなシナリオ作りをお勧めいたします。

 

 【ミッションについて】

Time Waverのセッションでは、「私の⼈⽣のミッションは何か?」といった質問を受けます。ただミッションは、その時々の⾃分の環境・欲望を意識化するためのもので、達成するためのものではありません。それを⽬指すプロセスで魂が震えやすくなります。この魂の震えが、⼈⽣の⽬的です。

 

使徒パウロは、イエス・キリスト との出会いを通じて迫害から使徒へ、ミッションを転換します。ミッションが間違っていたからこそ、魂の震えが⼤きくなります。⽣涯のミッションを、なんて賢く考えるうちは、決して魂は震えません。

 

Time Waverでミッションを決めよう、こんな魂胆では、魂が震える筈もありません。お⾦や地位や異性のために騙し合ってきた世界が、魂の震えを通じて、感動に満ちた世界へと⾒え⽅が変わります。それ に伴い、ミッションも⾃ずと進化していくのです。

 

私の最初の就職先は証券会社でした。そこで私は「直接⾦融(証券市場)を活⽤し た、⽇本における殖産興業の実現」というミッションを抱きました。当時の⽇本で は、産業育成はもっぱら間接⾦融(銀⾏などの⾦融機関)が担い、この点が欧⽶諸 国との⼤きな差でした。直接⾦融の⼒で⽇本に新しい産業を興したい、そんな気持 ちで株式公開業務に携わりました。困難なミッションだと思っておりました。

 

ところがこの改⾰は想像以上のスピードで進みました。この過程で、私の魂もブルブル と震えました。東証マザーズ等の新興市場が出現し、当初はヨチヨチ歩きでしたが、次第に多くの産業が⽴ち上がりました。ミッション・コンプリート(完了)と 私が感じたその時に、リーマンショックが起こりました。私の⼈⽣で⼀番ambitious な時間でした。壮⼤で実現不可能と思われるミッションも、結果は時代の流れ次第です。本気のミッションが実現し、私は今、⼆つ⽬の⼈⽣を⽣きております。

 

 【称名念仏とambitious】

法然上⼈は専修念仏を唱えました。法然上⼈の説く「南無阿弥陀仏」は魂の震える⾳、というのが私の直感です。だから他に修⾏は必要ありません。

 

ただ⼀⽅で、魂が震えるなら、他の修⾏でも構わない筈です。実際に明恵上⼈は、仏教の保守本流の修⾏を再構築して魂を震わせます。法然上⼈からすれば「もう魂が震えているんだから、何だっていいんだよ」という話だと思います。議論の意味がありません。

 

実はバカしか魂は震えません。だから法然上⼈は、バカにこだわります。明恵上⼈も特上のバカですが、お勉強もできました。実は法然上⼈もお勉強ができました。

 

 史実で⼆⼈は直接会ってはおりません。もし会っていたなら、「バカはバカ同⼠、 仲良くしようや!」という話になったのかもしれません。実際の歴史はそう簡単で はありませんでした。ただそこがまた、仏教の⾯⽩いところです。

 

 

 

◎本レポートはリアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ28 【2022年5⽉1⽇:牡⽜座新⽉】の文章を大原浩の責任で抜粋・編集したものです。

 

★沼⽥榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)、 人間経済科学研究所フェロー

 

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

 

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

 〒150-0044 東京都渋⾕区円⼭町5-4

 フィールA渋⾕1402号 isao.numata@5is.co.jp

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