価格も需要も回復したのに低調な米国の原油生産

価格も需要も回復したのに低調な米国の原油生産

原油相場は既にコロナ禍前の価格帯を超え、米国の石油需要は2019年の水準に回復しています。しかし、世界最大の産油国となった米国の生産量回復は大きく遅れています。これは、どういうことでしょうか。

シェール革命により2010年代の10年間で倍増した米国の原油生産量は、コロナ禍前の2019年末には日量1,300万バレルに達しました。しかし、その後の世界的な需要喪失を受けて産油量は同1,000万バレル割れを記録した後、現在同1,100万バレル余りの水準となっています。先行きについても、来年末時点の需要が2020年末比で日量190万バレルの伸びを示すのに対し、生産の伸びは同120万バレルに留まる見通しです。

一方で、需要回復期待感や OPEC+ による協調体制への信頼感で原油相場は既に2014年以来の高水準となっています。米国シェール オイル生産地では、原油価格の上昇を受けて油井リグの稼働数が8月下旬に400基を超える水準となりました。コロナ禍で落ち込んだ前年同期に比べると倍増ですが、2019年に比べると45%の減少と回復の道程は未だ半ばといったところです。リグ稼働数の変化は掘削の準備期間を要するため相場動向を2~3か月遅れて追いかけるとされますが、原油価格は今年初めには既に2019年の水準を回復しているのです。

そこで、別の要素を見てみましょう。コロナ ショックの混乱に揺れた昨年前半にリグ稼働数が大きく減ったのは当然ですが、稼働数はそれ以前に2019年初めから緩やかな減少傾向でした。米国の指標 WTI 原油相場が前年の$70/bblを挟んだ水準から$60/bblを割れる価格帯に下落したためです。原油生産の採算点に関しては諸説あり地域差も大きいとされますが、ダラス連邦準備銀行の調査では既存油井の操業コストは$20/bblを割る一部の例外地域を除き$30/bbl前後、新規油井では$50/bbl前後という回答が採掘・生産企業から寄せられています。ただし、パーミアンやイーグル フォードといった集積地以外では、シェール油井の開発コストは$58/bbl に上るようです。

*藤原 相禅 (ふじわら そうぜん)*

個人投資家

広島大学文学部卒業

日本大学大学院で経済学修士

地方新聞記者、中国・東南アジア市場での先物トレーダーを経て、米国系経済通信社で商品市況を担当。子育てのため一家でニュージーランドに移住。台湾出身の妻の実家が営む健康食品メーカーの経営に参画。

商品相場歴30年余。2010年から原油相場ブログ「油を売る日々 (https://ameblo.jp/sozen22/)」を運営。

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