出家は「制度化された引きこもり」?ベンチャー手法で魂に触れる仏教寺院を目指す!

 

 

1.紫雲⼭寶瑞院の再出発に向けて

紫雲⼭寶瑞院の再出発プロジェクトは、先代のご住職・杉浦昭雄の、早すぎるご遷化という衝撃からスタートしました。私にとっては仏恩を受けた⽅々ではありますが、本⽂では僧侶の敬称は省略致します。

 

私は昨年後半に役員に就任し、これからご指導を頂こうというタイミングでした。私は昭雄には⽣前、2度お会いしただけです。ここでの記述は議論の叩き台で、現時点での私の思いです。この⽂章を契機に、皆様と様々なご仏縁を結べますことを祈念して筆を取っております。また謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

私の法名(僧侶の名前)は榮昭(えいしょう)です。「榮」は⾼野⼭真⾔宗の傳燈⼤阿闍梨・故⼤栗道「榮」(代々⽊⼋幡⼤⽇寺)から頂き、「昭」は浄⼟宗紫雲⼭寶瑞院の故杉浦「昭」雄から時空を越えて頂いた、と考えております。仏教の頂上を⽬指す真⾔宗、底辺から救いの声を上げる浄⼟宗、この間のすべてを学び尽くせ、という名前です。

 

昭雄(しょうゆう)の後継者が英雄(えいゆう)、⽗でもある師僧から「雄」の字を継ぎました。紫雲⼭寶瑞院は英雄が住職を、私、榮昭が副住職を務めます。

 

紫雲⼭寶瑞院は浄⼟宗・真⾔宗の両⽅を学べるお寺です。ただ知恩院(浄⼟宗総本⼭)、⾦剛峯寺(⾼野⼭真⾔宗総本⼭)のいずれにも属しておりません。

 

中国では⼀つの寺院で複数の宗派を学べます。⽇本の宗派のあり⽅がすべてではないのです。⾼野⼭には実際、各所に称名念仏の痕跡が残っています。浄⼟宗の宗祖法然上⼈は、⾼野⼭の奥の院に眠ります。浄⼟・真⾔に留まらず、お釈迦様から派⽣した全ての教えを現代の⾔葉で⾒直し、その上でプロデュースをしていきたいと考えます。

 

英雄は「仏教界の秋○康」を⽬指す、⽇本の仏教寺院全体のプロデューサーです。この英雄をお⽀えすることが、私の法名・榮昭の意味だと考えております。

 

【紫雲⼭寶瑞院縁起】

紫雲⼭寶瑞院の歴史は、杉浦家の資料では⼤正4年(1914年)まで遡れます。少なくとも108年の伝統があります。

 

⼤正4年に現住職・杉浦英雄の祖⽗・井上兼雄が、杉浦家の養⼦に⼊り寶瑞院を引き継いだ、という記録が残ります。寺院は港区と多摩にありました。兼雄は千葉県⾹取市の東光⼭宝樹院来迎寺(現在は浄⼟宗系の単⽴寺院)で修業しております。その後⻄福寺(現存せず、現在は公⺠館が建っています)の住職となりますが、僅かな期間で寶瑞院に迎えられたようです。

 

英雄は⽗祖の修⾏の地に近い茨城県神栖市に寺院を建⽴します。現在、時間を⾒つけてはルーツを探り各地を訪ねており、今後も新たな事実が⾒つかることと思います。

 

祖⽗が修⾏した来迎寺の開⼭は明恵⾼弁上⼈、新義華厳宗の名僧です。阿字観の解説や夢診断を通じて、真⾔密教にも⼤きな影響を与えました。浄⼟宗の開祖である法然上⼈を「摧邪輪」「摧邪輪荘厳記」で厳しく批判したことでも知られます。ただ法然上⼈の「易⾏」の教えには感銘を受けていたとも⾔われます。

 

当時の顕密諸宗の教えを再構築し、宣教と普及に尽⼒しました。釈尊を⽗と慕い、終⽣独⾃の教団を組織することはありませんでした。

 

祖⽗・兼雄は、宗祖・法然上⼈と並び開⼭・明恵上⼈にも、共に尊崇の念を持たれたようです。令和の顕密諸宗を再構成する使命を、引き継いで来たのです。

 

法然上⼈は「智慧第⼀の法然坊」、勢⾄菩薩の化⾝とまで⾔われる教学者でもありました。

 

ところが教学上の批判に対して、反論をされた記録はほとんど残ってはおりません。明恵上⼈は「称名念仏とはいえ、仏になりたいという気持ち(菩提⼼)は必要だ」と批判を浴びせます。法然上⼈はそれには応えず、ただ称名念仏を説き続けます。「眼前の菩提⼼すら持てない魂を⾒捨てるのか」、沈黙にはそんな思いがあったのかもしれません。⽂殊師利菩薩と維摩居⼠の問答を彷彿させるやり取りです。

 

明恵上⼈もまた、理では譲らずとも魂では、法然上⼈の沈黙を受け⼊れます。引きこもりに苦しむ英雄は、この魂での会話が⼼に刺さるのでしょう。仏教の⾔葉は、時代とともに整備されました。ただはたしてそれで、⼈の魂に触れているのでしょうか?英雄の沈黙は、法然上⼈の沈黙に重なります。私はここに、令和の寺院仏道復興の端緒が⾒える、そんな気がしております。

 

2.仏教のビジネスモデル

⽇本の仏教寺院は超衰退産業です。英雄は寶瑞院の再出発に留まらず、⽇本の仏教寺院全体を盛り上げたいと考えます。

 

なぜ寺院がここまで衰退するのか、英雄は、仏教が⼈の魂に触れないからだ、と⾔います。触れる⽅法論については、英雄は全く問題にしません。魂に触れるか否かが重要で、「魂に触れるのであれば、⼋万四千の法⾨はすべて我が法⾨である」と⾔います。浄⼟宗が敬遠する聖道⾨(厳しい修⾏を要する仏教)も、魂に触れるなら⼤いに結構、むしろ易⾏道(⾏や教学より、魂を重視する仏教)の良き師である、と割り切ります。

 

聖道⾨とされる真⾔密教を奉ずる私も、肩⾝は狭い⼀⽅で、英雄の易⾏道は誠に興味深いものです。

 

江⼾時代に9万あった仏教寺院数は、現在約77,000(2020年末)まで減りました。それでも現在のコンビニ数56,000(2020年末)を上回ります。仏教界全体の総収益(寺院の営利事業含む)は新型コロナ前で5,700億円、コロナ後は2,700億円程度と予想されます。

 

この社会不安の中、⼈の交流が制限されているとはいえ、キリスト教はむしろ、市場規模を伸ばしております。衰退が騒がれるコンビニ業界の市場規模は10兆7千億円、占いを含むスピリチュアル業界は全体で1兆円、如何に仏教寺院が⼀⼈負け状態か、数字は雄弁です。

 

寺院数は今後、現在の10分の1程度になるでしょう。英雄の指摘が正しければ、それでも供給過剰は続きそうです。

 

⽇本の寺院の主要なビジネスモデルは墓地と葬儀です。葬儀費⽤は下落を続けておりましたが2015年に下げ⽌まり、その後は横ばい傾向が続きます。ただ初七⽇、四⼗九⽇などのリピート葬儀は減少していると思われます。

 

また会葬者数の減少は2015年以降も下げ⽌まりません。葬儀費⽤もいずれ、下落に転じるでしょう。私はそれでも当初は、墓地と葬儀を軸に寺院運営を考えました。

 

英雄は「魂に触れない葬儀ならいらない」と⾔います。⽗でもあり師でもある昭雄の葬儀も、故⼈との魂の触れ合いを重視した、簡素で⼼温まる葬儀でした。

 

宗教年鑑(⽂化庁)によると平成の30年間で仏教信徒は約4,000万⼈減少(約45%減)しました。創価学会の⽇蓮正宗脱退(⽇蓮正宗とダブルカウントされていた、と考えられている)といった特殊要因もありますが、減少傾向は今後も続きそうです。

 

⼀⽅で寺院参拝、宿坊・修⾏体験は今も盛んです。進⾏しているのは寺院離れで、仏教離れでは無いのかもしれません。宗派別に⾒ると浄⼟宗約600万⼈、⾼野⼭真⾔宗約550万⼈。カウントの仕⽅が各宗派で異なります。

 

私は概ね、信徒数1万⼈前後を損益分岐点と⾒ています。英雄の思いをまず、どう最初の1万⼈に伝えるのか、これが寺院再興の最初の課題です。

 

【寶瑞院の3つの戦略】

移動時間で1時間までは⽇帰り圏、東京からの動員も考えられる地域です。神栖は約1時間半、ギリギリですが宿泊圏です。東京からの⽇常的な動員は⾒込めません。

 

たとえば⾝延⼭(⽇蓮宗の総本⼭)は東京から約2時間、東京マーケットに対しては、⽇本全国の有⼒スピリチュアル・スポット(霊⼭・霊地)と競合します。

 

また東京には、本⼭クラスの⼤寺院が軒を並べます。こことの競合は得策とは思えません。

 

神栖では地元の事情を考慮したリアルな集客、東京・海外へは差別化したコンテンツのネット配信、この使い分けが第⼀の戦略です。東京・海外へのネットコンテンツの制作・編集等をお⼿伝い頂ける⽅を、現在探しております。

 

神栖には東京レベルのコンテンツを紹介し、東京には神栖で育成した斬新なコンテンツを紹介する、これが第⼆戦略です。

 

⼤寺院や有⼒スピリチュアル・スポットとは、私達は紹介者の⽴場で、共存共栄の関係を築くのが良いと思います。

 

神栖市は⼤規模製造業の企業城下町、製造業の復権で経済が好調な上、数は僅かとはいえ地⽅では珍しい、⼈⼝流⼊地域です。神栖市の推計では、あと10年程度は現在の⼈⼝を維持できるようです。

 

インフレに強い製造業主体の産業構成でもあり、サービス経済化した⾸都圏とは異なる経済構造も魅⼒です。

 

ただ私達は、神栖市では落下傘部隊です。どなたか地元のマーケティング等のお⼿伝いをお願いできる⽅、ご紹介頂けましたら幸いです。神栖で強くなれば、東京での差別化が⾒えてきます。

 

第三戦略は「引きこもり」を専⾨分野とする戦略です。英雄も⻑い引きこもりを体験され、今も克服中です。失礼な話ではありますが、仏教は素材の特⾊を徹底して活⽤する教え、浄⼟宗・杉浦家・神栖市と同様に、「引きこもり」という特⾊も私たちの強みです。

 

引きこもりは社会問題化しており、私の周囲でも密かに悩んでいる⼈がたくさんいます。仏教には出家という考え⽅がありますが、考えようによっては引きこもりの制度化とも⾔えます。中華圏の経営者は、仏教的な背景を持つ⽅も多く、⼤規模会社のCEOが、1ヶ⽉お寺に籠もる、なんて話もよく聞きます。

 

⼀⽅でコスプレやアバター、Vチューバー、メタバースなどは、引きこもりから発⽣した⽂化現象とも⾔えます。

 

英雄の⽂章は素晴らしいのですが、臨機応変の対話は苦⼿です。それなら最初の2〜3年は、アバターで説法する、といった⼿法も検討しております。

 

キリスト教の懺悔は、神⽗様の顔が⾒えない状況で⾏われます。顔が⾒えない⽅が、本当の意味での相談はしやすい、という話も聞きます。

 

アバターでアバターに救いを求める、みたいな⽅法論もあるかもしれません。引きこもり⼈⼝は約100万⼈とも推定されます。そのうちの1%に希望を与えられれば、最低ラインの1万⼈が⾒えます。その上で社会の光となる寺院ができます。現時点では⼀般論に過ぎません。どなたかに具体化するお知恵をお借りできましたら幸いです。

 

神栖の建設予定地は、広く便利な場所です。お寺と関連のある、テナントの誘致を考えております。お寺の建築には半年はかかります。ただネット配信、英雄の出版プロモーションなど、すぐに取り掛かれる課題もあります。

 

皆様のお知恵をお借りするため、今後は毎⽉、戦略会議を東京・神栖で開催したいと考えております。ベンチャー企業を創業する際によく使う⼿法です。来⽉以降、テーマ等は早めにお知らせいたします。ご関⼼をお持ち頂ける⽅、是⾮いらして下さいませ。

 

あまり⽇がありませんが、第⼀回の戦略会議は、3⽉5⽇(⼟)14時〜16時、渋⾕近辺で開催いたします。第⼀回なので、これまでのご報告が中⼼です。ご参加頂ける⽅には、お問い合わせを頂けましたら、場所等詳細をお知らせいたします。

 

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ25 【2022年3⽉3⽇:⿂座新⽉】の文章を大原浩の責任で抜粋・編集したものです。

 

★沼⽥ 榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)

 

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企 業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

 

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を 務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

 〒150-0044 東京都渋⾕区円⼭町5-4

 フィールA渋⾕1402号 isao.numata@5is.co.jp

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