座禅をすれば仏になれるのか

 

 

 

【「悟るため、往生するための仏教」と「現世利益のための仏教」】

 

勝手な理論ですが、私は「悟るため、往生するための仏教」と「現世利益のための仏教」を敢えて分けて考えてみました。

 

もっとも「悟る」と「往生する」は違う概念ですし、現世利益とは言っても祈祷・祈願もあれば、医学・科学・心理学との連携など、様々な分野が考えられます。

 

「現世利益のための仏教」には違和感を感じられるかもしれませんが、お釈迦様は在家の信者にも法を説いておられます。悟ることを目的としない仏教は、お釈迦様の時代からあったようです。

 

次に瞑想に関してですが、「悟るため、往生するための瞑想」を探してみると、これがなかなか見つかりません。

 

坐禅を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、確かに初祖達磨は「坐禅により外からの妄念に隠されている仏性を発露することができる」と説いています。ただこの流れは早くに途絶えて、現在に伝わる坐禅は、悟りを目的にはしません。

 

「南嶽(なんがく)磨磚(ません)」の故事が知られております。中国の禅宗発展の立役者は馬祖道一ですが、これはこの馬祖の物語です。

 

馬祖が坐禅をしていると、師の南嶽が「何のために坐禅をしているのか?」と問うので、馬祖は「仏になるため」と答えました。

 

すると南嶽は真剣に瓦を磨き始め「瓦を鏡にする」と言うので、馬祖は「瓦を磨いても鏡にはなりませんよ」と思わず口にだしてしまいました。すると師の南嶽は「坐禅をすれば仏になれるのか」と問い返したというお話です。

 

日本には坐禅が飛鳥時代に伝わったようですが、宝瑞院のご本尊は、飛鳥時代の坐禅のスタイルを模したものではないか、と私は妄想を楽しんでおります。

 

鎌倉仏教のスターは法然上人ですが、鎌倉仏教の第一陣を飾ったのは大日房能忍、達磨宗という禅宗の宗派です。達磨宗とは言いながらも達磨の教えとは異なり、戒律無用論、修行無用論を説き、当時の政治や経済、芸能など幅広い分野に影響を与えたと言われます。

 

中国禅宗の高僧からも印可を得て嗣法を許されますが、当時の日本の仏教の中核・比叡山から弾圧を受け、結局禅宗自体が禁止されてしまいます。

 

能忍の禅風は栄西(臨済宗)や道元(曹洞宗)とは異なりますが、栄西は禅を布教する同志でしたし、能忍の後継者グループは一部、道元教団に吸収されます。

 

「禅宗は自力、浄土宗は他力」という対立的な理解では、仏教としての共通点・本質を見失う恐れもありそうです。

 

前述の馬祖の弟子、百丈懐海は大乗仏教と上座部仏教を博約折衷し、「百丈清規」という仏教集団や修行者のルールを新たに定め、後の仏教に大きな影響を与えました。

 

馬祖は浄土経典である観無量寿経の「即心即仏」を禅の世界に取り入れ、禅浄双修の大きな流れを築きますが、私は心意気だけでも百丈懐海でありたいと願うのです。

 

◎本レポートは、<宝瑞院副住職 沼⽥ 榮昭のマニアックなメルマガ 03【2024年3⽉】

を大原浩の責任で編集したものです。

 

★沼⽥ 榮昭(宝瑞院副住職)

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を⼿掛け、「伝説の株式公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。2000年〜2021年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を務める。リカバリーインターナショナル株式会社(東証グロース:9214)社外取締役。

 

宝瑞院(茨城県神栖市・浄⼟宗系単⽴寺院)副住職。中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、情報経営イノベーション専⾨職⼤学客員教授、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員。CIF認定TimeWaverセラピスト®。RYT200(Registry ID: 417550)、

ディープマインドフルネス®ヨガ認定講師。

 

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