資本主義と瞑想のただならぬ関係
★「1970年までの『米国革新の世紀」と、これからの米国を語る」からの続きです。
【アーバン・ブッディズム】
もう一つの収穫は、自身が唱えてきた「アーバン・ブッディズム」とは何かが、この書籍(「米国経済成長の終焉」)と出会い、理解が深まり、変わりました。
「アーバン・ヨギ」という言葉がありますが、山や修行道場に入らなくても、ニューヨークのような大都会で、ヨギとしての人生を全うする生き方を示します。
日本では片岡鶴太郎氏が有名ですが、毎日4時間自宅でヨガの修行されながらも、都会での職業生活・社会生活を満喫されております。
アーバン・ブッディズムのイメージは仏教版の片岡鶴太郎氏、もしくは日本の維摩居士、都会で仕事をこなしながら、僧侶をも凌駕する仏教生活者です。
家庭が修行道場になるので、仏教の形態は変わりますが、仏教の敷居が下げたり、仏教を新たなファッションに仕立てる話ではありません。
それで人が幸せになるなら、それは仏教とは異なるシステムだと思います。
米国の「革新の世紀」は、たとえば主婦を過大な家事労働から解放し、社会に進出する膨大な時間を創出しました。
仏教の「修行」、もしくは仏教的な生活には、膨大な時間と資金とが必要、「出家」の流れを組む修行システムを前提に、従来の仏教は構築されました。
ニューヨークのアーバン・ヨギも、米国の「革新の世紀」の成果を前提としなければ、ヨガの思想面・技術面の発展からだけでは説明ができません。
私はこれまで、アーバン・ブッディズムを「情報化社会に対応した仏教」と定義してきましたが、この書籍を読んで、この定義では不十分だと感じました。
情報化社会のかなたに存在する「キャピタリズム(資本主義)」こそが、これからの私の仏教が、総体として対峙するべきテーマだと今は考えております。
「革新の世紀」は、キャピタリズムという富の増幅装置がフル回転した時代です。
資本家と労働者の対立を内包しながらも、人々の生活には著しい改善が見られ、貧富の格差が急激に縮小し、大量の中産階級が創出され、社会は安定に向かいました。
米ソ冷戦の終結は1991年ですが、ゴードン教授の説では、この時期には米国のキャピタリズムは既にピークを過ぎていたことになります。
あるいは共産圏の没落が、キャピタリズムの衰退を招いた可能性もあります。
ソ連は独自の経済ブロックを構築しアメリカと対峙しましたが、中国はキャピタリズムに内包された社会主義、アメリカと根源的には同じ問題を内包する社会です。
米中対立の行く末は、両国の中産階級の構築競争に左右されると私は見ております。
労働者を代表する政治勢力の世界的な退潮が、社会分断の遠因だと捉えてみると、その受け皿としての世界的な右翼・ポピュリズムが浮かび上がります。
この議論が複雑なのは、昨今はキャピタリズム以外の経済活動が広がり、起業塾が隆盛を誇り、それこそが新しい経済の主軸であるかのような宣伝が流布されます。
ただ一国の経済の主軸は今もなおキャピタリズムであり、キャピタリズムの改革なくして、政治にせよ経済にせよ社会にせよ、日本の変革はあり得ないでしょう。
「瞑想で宇宙が良くなる」「起業塾で学びお金持ちになり、日本を幸せにする」との思想は、一隅を照らすミクロの観点からは重要ですが、マクロで考えるなら妄想に過ぎない、少なくとも仏教的な発想ではないと、私は考えております。
瞑想を語ることは真の紳士の条件に反する行為かもしれませんが、大原先生も実は、毎日40分近く、瞑想に取り組まれているそうです。
聞きたくない分野も、あるがままに受け止めるのが仏教ですが、賛否は別として、今回のメルマガは、如何でしたでしょうか?
◎本レポートは、<宝瑞院副住職 沼田 榮昭のマニアックなメルマガ 10 【2024年10月】を大原浩の責任で編集したものです。
★沼⽥ 榮昭(宝瑞院副住職)
楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を⼿掛け、「伝説の株式公開請負⼈(⽇
経新聞記事より)」と⾔われる。2000年〜2021年まで21年間、サイバーエージェントの
社外役員を務める。リカバリーインターナショナル株式会社(東証グロース:9214)社
外取締役。
宝瑞院(茨城県神栖市・浄⼟宗系単⽴寺院)副住職。中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、情報経営イノベーション専⾨職⼤学客員教授、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員。CIF認定TimeWaverセラピスト®。RYT200(Registry ID: 417550)、ディープマインドフルネス®ヨガ認定講師。
ファイブアイズ・ネットワークス株式会社
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研究調査等紹介
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