ずる 嘘とごまかしの行動経済学

ダン・アリエリー 早川書房

まず最初に申し上げます。

  1. 私は「これまで嘘をついたことが無い」と言い切るほどの嘘つきではありません。
  2. 私は、善人と悪人の中間で、たぶん悪人に近い方の人間だと思います。

さて、本書は人間の嘘や欺瞞に関する研究にあふれていて、自分自身の行動にハッとさせたり、「こんな人いるな・・・」とにんまりさせてくれます。

特に興味深いのが、「南北戦争最後の生存者の話」です。1959年に南北戦争最後の生き残りの葬儀が行われ、パレードには数万人が参加した上、1週間の服喪期間が正式に定められました。

ところが、あるジャーナリストの調査によって、南北戦争がはじまったとき、その人物がまだ5歳であったことが突き止められたのです。しかも、もっとひどいのは、南北戦争最後の生き残り12人が、(ジャーナリストの調査によれば)全員インチキであり、最後の生き残りの話も、それらのインチキ野郎の嘘のまねであったことです。

現在我々は、「朝鮮人従軍買慰安婦問題」において同じ光景を見ています。「強制連行された」という話自体が捏造であるという問題は別にしても、「年齢が合わない」などの奇妙な部分は「元従軍慰安婦」であると主張する女性たちの間に数多くみられます。

もちろん、米国では国家ぐるみで嘘をついたりしないのに対して、南朝鮮(大韓民国)では、国家が率先して、嘘やねつ造を繰り返しているので、そのあたりの文化的背景の研究は必要だと思います(著者にぜひ分析してもらいたいものです)。

しかし、それ以上に「嘘をつく」という行為が、人類にとって普遍的な行為であるということは十分認識しなければなりません。また、本書がすごいのは「人間は自分がついた嘘に影響され、次第にその嘘を信じるようになる」ということを実験によって証明していることです。

しかも、信じがたいことですが、例えば<ずる>をして高い得点を得たことがわかっているのにも関わらず、<ずる>ができないように組まれた次のテストの得点予想で、<ずる>をした高い得点を基準(つまりそれが自分の実力だと信じる)にし、しかもその予想に対してお金まで賭けてしまうことです。

参考書籍等紹介

『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』、映画ディア・ファミリー原作

    清武英利著、文春文庫   事実を基にした「ノンフィクション」である。 語り口は淡々としている。取り立てて激しい感情表現があるわけでは無い。 だが、登場人物たちの心の奥底から湧き上がってくる感情が、圧倒的な力で迫っ .....

「黄金の馬」 パナマ地峡鉄道 ー大西洋と太平洋を結んだ男たちの物語ー

      ファン=ダヴィ・モルガン著、中川 普訳、三冬社 本作品は、子供の頃夢中になって読んだロバート・L. スティーヴンソンの「宝島」を思い起こさせるところがある。子供向けの簡略版であっ .....

確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか

デボラ・J・ベネット白揚社

 「杞憂」という言葉があります。  中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から生まれました。心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しますが、「天が崩れ落ちてくる確率」 .....

たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する

レナード・ムロディナウ ダイヤモンド社

 「偶然」にまつわるエピソードを、世の中の幅広い範囲にわたって歴史的に深く洞察した良書です。特に歴史的なエピソードには興味深いものが多く、カルダーノの半生は注目されます。  そもそも、「確率論」や「統計学」は、古代ギリシ .....