テクノロジストの条件 ものづくりが文明をつくる

P.F.ドラッカー ダイヤモンド社

 

7000年前に誕生した「灌漑文明」から話は始まります。確かに、灌漑文明よって都市が形成され、現代においても文明が都市に基盤を置いている(それどころか益々集中度が高まっている)のは疑いようのない事実ですから、「灌漑」こそが、人類に最大の影響を与えたテクノロジーであるのは否定できないでしょう。

今回読んでみて、印象に残ったのは第15章<ポスト資本主義社会の到来>です。

13世紀に、欧州では一気に都市化が進み社会が激変しました。そのおおよそ200年後、1455年のグーテンベルグの印刷革命や1517年のルーターの宗教改革、さらには1470年から1500年にかけて絶頂期を迎えたイタリア・ルネッサンスによって西洋社会は大きく変貌します。

そして、さらに200年余りを経て資本主義と共産主義が登場し、1810年に最初の普通大学であるベルリン大学が設立されます。これにより、「知識」の大衆化が加速されます。

共産主義が「分け前を要求するだけで、自らは何も生み出さないシステム」であることが白日の下にさらされ、ベルリンの壁が崩壊したのが1989年。1991年にはソ連邦が崩壊しました。いまだに、共産主義は知性と教養に欠けた人々の間にはびこっていますが、現代社会にとって用無しであることは間違いありません。

しかし、勝者に見える資本主義も終焉を迎えつつある(あるいはすでに終わっている)とドラッカーは考えています。

重要なのは、<資本主義が鉄道の線路や工場設備など多額な資本を集める必要が生じた>ことから生まれた仕組みであるということです。

現在のビジネスの主流は、前述のような大型の設備(投資)を必要としないIT・サービス産業に移っています。<資本>よりも<知識>こそが重要な生産要素であり、資本主義ならぬ<知本主義>とでも言うべき社会へ移行しつつあるというのがドラッカーの主張です。

▲なお、ドラッカーが唱える<ポスト資本主義社会>と関連した内容が拙著、<「複雑系」ビジネスー資本主義・社会主義を超える“新経済”入門(あいであ・らいふ)>の第6章<資本主義・社会主義から「人本主義」へ>などで論じられています。

<文責:大原浩>

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