ブラック・スワン(上)(下)

ナシ―ム・ニコラス・タレブダイヤモンド社

アマゾン創業者のジェフ・ベゾスの愛読書であり、幹部たちにも読ませているということで読んでみましたが、期待をはるかに上回る内容でした!

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズなどの「俗物」の「ゲスの極みおっさん」と違って、ジェフ・べゾスが知性と教養にあふれる「ゲスの極みおっさん」であることが良くわかりました。

また、アマゾンは創業当初から、他のIT企業とは全く異なった経営を行ってきましたが、その理由もこの本を読むとよくわかりますし、今後の同社の将来にも大いに期待が持てます。

かなりの大著ですが、著者(彼もかなりの「ゲスの極みおっさん」です・・・)が主張したいことを「ウルトラ大雑把」にまとめると<未来は予測できない>ということです。これはドラッカーが常々主張していることで「すでに起こった未来」という著書があるのも、それ以外の未来は予測不能ということを示しています。

また、バフェットも同様のことを「私には未来は予想できない。そして【未来が予想できるという人物がいたら私の前に連れてきてほしい】」と述べています。つまり、未来を予想できる人間なんていないし、もしそう主張する人物がいたら「詐欺師」に違いないということです。

未来は予想できないとしたら、どうしたらよいのか?という疑問に対する三人の答えを再びウルトラ大雑把にまとめると、「将来の危機に備える」しか方法が無いということです。地震がいつどこで起こるかを予想することができなくても、地震が起こった時のために準備することはできるということです。

バフェットやドラッカーが経験や直感、それに深い洞察でたどり着いた結論を、論理的・実証的に解き明かしたのが本書です。

専門用語などもかなり出てきますが、著者も述べているようにそのような部分はどんどんとばして読んでかまいません。

<文責:大原浩>

 

参考書籍等紹介

『アトムの心臓「ディア・ファミリー」23年間の記録』、映画ディア・ファミリー原作

    清武英利著、文春文庫   事実を基にした「ノンフィクション」である。 語り口は淡々としている。取り立てて激しい感情表現があるわけでは無い。 だが、登場人物たちの心の奥底から湧き上がってくる感情が、圧倒的な力で迫っ .....

「黄金の馬」 パナマ地峡鉄道 ー大西洋と太平洋を結んだ男たちの物語ー

      ファン=ダヴィ・モルガン著、中川 普訳、三冬社 本作品は、子供の頃夢中になって読んだロバート・L. スティーヴンソンの「宝島」を思い起こさせるところがある。子供向けの簡略版であっ .....

確率とデタラメの世界 偶然の数学はどのように進化したか

デボラ・J・ベネット白揚社

 「杞憂」という言葉があります。  中国古代の杞の人が天が崩れ落ちてきはしないかと心配したという、「列子」天瑞の故事から生まれました。心配する必要のないことをあれこれ心配することを意味しますが、「天が崩れ落ちてくる確率」 .....

たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する

レナード・ムロディナウ ダイヤモンド社

 「偶然」にまつわるエピソードを、世の中の幅広い範囲にわたって歴史的に深く洞察した良書です。特に歴史的なエピソードには興味深いものが多く、カルダーノの半生は注目されます。  そもそも、「確率論」や「統計学」は、古代ギリシ .....