ブロックチェーン入門

森川夢祐斗 KKベストセラーズ

1990年代後半、インターネット・ITバブル華やかりしころの熱狂をご記憶の方も多いと思います。当時は「インターネット・ITと名前がつくベンチャーなら「A4の企画書1枚で数億円が1週間で集まる」などといわれましたが、実際にそのような「熱狂」の時代でした。

当時の私は、そのようなバブルを冷ややかな目で見ていたのですが、実際2000年代に入ってすぐにITバブルは崩壊し、雨後のタケノコのように生まれていた「ナントカドットコム」というような名前のIT関連企業のほとんどは、今や見る影もありません。

しかし、私の予想が大きく外れた部分もあります。スマホやECなど、「ITやインターネットがたった20年ほどの間に社会のインフラになる」などとは、正直全く予測していませんでした。

ただ、よく考えると、卓越したテクノロジーがはじめて実用化されてから、20年〜30年ほどで社会に普及するという流れは、少なくともグーテンベルクの印刷技術の登場の頃からありました。

ピーター・ドラッカーがよく取り上げるのが、1950年代の大型商用コンピュータの時代から20〜30年経って、パソコンなどによるコンピュータの一般の時代が始まったということです。そして、それから20〜30年経って、インターネット・モバイルの時代に突入したわけです。

ブロックチェーンも、コンピュータやインターネットに匹敵する革新技術です。

ただし、今や投機(投資対象)として脚光を浴びているビットコインについては「ねずみ講も一番最初に参加すれば儲かる」としか言いようがありません。

現在少なくとも700種類の仮想通貨がある現状では、どれが(いずれでもなく新たに登場する仮想通貨かもしれませんが・・・)生き残るかは定かではありません。

ウォーレン・E・バフェットが好んで取り上げる逸話は「黎明期の米国で少なくとも数百社あった自動車会社は現在3社に集約されている」というものです。自動車産業が発展するのが明らかであったとしても、その数百社の中のどれが生き残るのかはわからなかったので、自動車会社に投資したほとんどの投資家は損をしているということです。

しかしながら、仮想通貨というものがこれまで当たり前と思われてきた「中央集権型の通貨」をひっくり返す潜在的力を持っているのは確かです。

先進国で「中央銀行」が設立され、中央銀行が通貨をコントロールするようになったのはここ100年から200年程度のことにしかすぎません。それまでは、いわゆる分散型の通貨システムが主流だったのです。(この点については「進化は万能である 人類・テクノロジー・宇宙の未来」マット・リドレーの第15章または私の書評をご参照ください。<通貨の本質>については、拙著「銀行の終焉」(あいであ・らいふ)をお読みください)。

今後20〜30年で中央銀行が廃れて、中心が無い分散型の<仮想通貨>が主流になるといわれても、現時点では信じがたいことですが、その信じがたいことが次々と起こってきたのがこれまでの歴史です(もっとも、通貨は政府の力の源泉でもありますから、政治的に一筋縄ではいかないと思いますが・・・・実際には中央があるクローズ型の仮想通貨が優位になると思います)。

また、仮想通貨のベースとなるブロックチェーン技術のすごさは、本書を読んで改めて痛感しました。

確かに<不動産登記>や<著作権><医療カルテ>などブロックチェーン技術は至るところに応用できます。特に、現在政府や地方自治体が関わっている煩雑な承認、証明、確認などの作業を、政府を介在せずに分散型で実現できるのは極めて重要な点です。

インターネットも「情報の独占」に風穴を開け、チャイナなどの(共産主義)独裁国家などでは、政府の悩みの種です。

本書は、その驚嘆すべきブロックチェーンをテクノロジーというよりも<概念・思想・哲学>の面からわかりやすく解説した良書です。

<文責:大原浩>

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