量子コンピュータ 超並列計算のからくり

竹内繁樹 講談社ブルーバックス

 コンピュータの歴史

マスコミが騒ぐ先端技術のほとんどは眉唾ものである。常温超電導、常温核融合、空飛ぶ自動車、AIなど・・・詳しくは現代ビジネス2018年8月27日の記事「騙されるな、空前の電気自動車(EV)ブームは空振りに終わる」を参照いただきたい。

 

量子コンピュータもその「空騒ぎ」の一つであると思われる。

 

数学的に二進法を確立したのは17世紀のゴットフリート・ライプニッツで、”Explication de l’Arithmétique Binaire” という論文も発表しているが、現代コンピュータの理論的な歴史は少なくともそこまではさかのぼるであろう。

 

現代の電子式コンピュータの基盤は、第2次世界大戦時、ドイツ軍の暗号エニグマの解読に貢献し、映画の主人公にもなったアラン・チューリングがつくったといえる。

 

1950年代初頭には、ユニバック(ユニシス)やIBMが電気式の大型コンピュータを競って製造したが、現在のパソコン、モバイル全盛時代に突入するまでには半世紀以上かかっている。

 

1950年代以前は、IBMが大きなシェアを占めていた「機械式コンピュータ」が主に使われていた。ちなみに、ビルの一室もあるような巨大な当時の電気式コンピュータの計算能力は、現在の電卓以下であり、アポロ計画に使われた巨大なコンピュータも同様であった。

 

だから、宇宙船の軌道修正の計算に何時間も何日もかかったのである・・・・

 

「機械式コンピュータ」は、穴の開いたパンチカードを差し入れて使うものだが、電子式と違って書き換えができないため、数理計算が多い保険会社などでは巨大なビルの数フロアーをパンチカードの保管庫に使っていたほどである。

 

ちなみに、この機械式コンピュータが登場する以前は、主に女性の計算を専門とする事務員を大量に雇っており、彼女たちが「コンピュータ」と呼ばれていたのである(語感からも分かるように、元々は職業を示す言葉であった)。

 

つまり、現代の電子式コンピュータのルーツは数世紀前にあり、その後の発展は、機械式、大型などいくつもの変遷を遂げてきたのである。

 

本当に実用化できるのか?実用化の意味があるのか?

まず、量子コンピュータに現在の電子式コンピュータをしのぐ性能があるのかどうかが、マスコミの大げさな報道とは別に、疑問である。

 

汎用性、一般性においては、将来的にも量子コンピュータが電子式コンピュータをしのぐとは思えない。実際、パソコンやモバイルの実用性においては、現在のコンピュータレベルで十分な気もする。少なくともコスト面で、量子コンユ―タが電子式コンピュータを超えることは考えにくい。もし超えるにしても、世紀をまたぐような話になるのでないか?

 

また、よく取り上げられるセールスマン巡回問題のような特殊かつ膨大な量の計算において、喧伝されているような効果が発揮できるのか疑問であるし、そもそもそのような計算が早くできたとして、世の中がどれほど発展するのだろう?

 

もっと言えば、量子コンピュータの「高速計算」というのは、あくまで理論的な近似値がベースである。デジタルコンピュータのように、人間が検証できる疑いようが無い正しい答えでは無く、「理論的に正しい」と推計される値である。

 

デジタルコンピュータでもディープ・ラーニングや「自己学習」が進化すると、計算過程をすべて追跡するのが不可能になり、「結果を信じてよいのかどうか」という問題が生じる。

 

量子コンピュータにおいても、計算過程をすべて検証することはできず、我々が手に入れることができるのは「理論的に正しいはず」の答えである。

 

このようなことを考えると、量子コンピュータの開発そのものの意味さえ分からなくなってくる。

 

最大の難関はデコーヒレンス

デコーヒレンスは、「重ね合わせ状態の破壊」とも呼ばれる。量子コンピュータは量子の重ね合わせ現象を利用するので、この状態を計算に必要な時間だけ維持することが不可欠だが、それを実現するのが難しい。

 

量子計算においては、電子、光子、中性子、陽子やその他素粒子が使われるが、いずれも現在のところ重ね合わせ状態の維持が十分できない(光子は比較的ましな方である・・・)

 

常温超電導の場合も、絶対零度ではすでに成功しており、徐々にその温度は切りあがっているが、いまだに世界最低温の冷凍庫や南極などの極寒とさえ比較になら無いほどの超低温レベルで、実用化などはるか先の話である。まずは、常温で超電導を可能とする物質を発見しなければならないのである。

 

量子コンピュータも、50ビット程度の計算事例は報告されているが、さらに多くのビットをコントロールするためには、重ね合わせ状態を十分実用的に維持できる特殊な量子の発見(あるいは量子のコントロールのためのブレークスルー)が必要なように思える。

 

50ビットの計算というのは、安物のノートパソコンで十分計算できる内容である。

 

さもなくば、いつまでも「実験段階での成功」というニュースを我々は延々と聞き続けることになるだろう。

 

重力は本当に存在するのか?

やや横道にそれるが、最近「重力というものは存在しないのではないか」という学説が脚光を浴びている。

 

宇宙の四つの基本的な力(強い力、弱い力、電磁気力、重力)のうち、重力だけが極端に弱いことは長年不思議に思われており、重力は他の宇宙(多次元宇宙)に漏れているのではないかという説もそれなりの説得力を持っていた。

 

重力がどれほど弱い力なのかは、地球全体の重力を背負っているクリップを手のひらに乗る磁石(電磁気力)で持ち上げることができることからすぐに理解できる。

 

また、2015年には重力波が発見された。この重力波は、地球から約13億光年の彼方で、2つのブラックホールが互いに渦を巻くように回転して衝突したときに発生。ブラックホールの1つは太陽の36倍の質量を持ち、もう1つは29倍の質量を持っていた。

 

しかしながら、その時にも重力を伝えると考えられ量子(グラビトン)は、地球上の観測施設で検出されなかった。

 

もちろん、観測装置の感度の問題もあり得るが、強い力を伝達するグルーオン、弱い力のw、zボゾン、電磁気力の光子の存在がすでに確定しているのに対して、重力のグラビトンは影も形も無い

 

ところが、重力をエントロピーの法則の一部だと考えるとすべてがすっきりと解決される。

 

例えば、木からリンゴが落ちるのは、万有引力の法則のせいでは無く、単純にリンゴのエントロピー(乱雑さ)が増大したのだと考えるということである。

 

もし、この考えが証明されれば、ニュートン以来の物理学は根底からひっくり返り、天動説から地動説へ移り変わった時のような騒ぎになるであろう。

(文責:大原浩)

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