ウクライナ情勢から⾔論空間を読む

 

ウクライナ情勢から⾔論空間を読む

本年2⽉24⽇(⽊)、ロシア軍がウクライナに侵攻しました。状況は⽇々動いておりコメントが難しいですが、ウクライナ情勢を通じて感じたことを3点記載します。

 

1点⽬はセンターピンの移動、それに伴い情報空間の歪みについて記載します。2点⽬はインフレとデフレの、政治・国際情勢への影響を考察します。3点⽬はウクライナを巡る多様な側⾯を、中国を題材に検討してみます。

 

【センターピンの移動】

センターピンはボーリングの中⼼のピンです。「センターピン理論」とも⾔われますが、「優先事項を⼤胆に⾒極めて、集中して実⾏する」考え⽅です。私の経済分析のセンターピンは「インフレ」でした。

 

ウクライナ情勢もインフレのスピードを左右する変数と捉えておりました。今やインフレは既定路線、資本市場も織り込み済みです。とはいえインフレは進展途上、インフレの影響の考察は今もなお重要です。ただ私にとっては、次のセンターピンを探し始める時期が来ました。

 

社会全体のセンターピンも変化しました。マスコミの関⼼も、ウクライナへの集約が⾒られます。⼈間は最⼤の問題に関⼼を集中します。⼈体でも同じで、問題は複数でも痛みは⼤抵1カ所に集約されます。痛みを感じなくなっても、治ったとは限りません。⽶中対⽴、脱炭素化といった課題の報道は減少しました。この⾔論空間の歪みを分析・活⽤すれば、経営のチャンスが掴めると思います。

 

⽇本語の⾔論空間では、ロシアの⾮道は報道されます。ただロシア側の主張は断⽚的な上、⼤半は根拠のないフェイクニュースという扱いです。ロシア⼤使館のWEBを⾒ても、⽇本語での主張は⾒当たりません。

 

⽇本語の⾔論空間では、意識的に情報を取らないと、ロシアの主張を体系的に知ることはできません。その意味では報道が機能していません。

 

「主権国家を⼀⽅的に侵略して、⼀般市⺠を攻撃する」だけで悪は悪です。では⽶国のイラク侵攻はどうだったのでしょうか?広島・⻑崎の原爆、東京⼤空襲も、⺠間⼈を犠牲にして、⽇本の交戦意欲を奪う戦略でした。

 

⽶国のみならずどの先進国も、その⼿は汚れています。もちろんそれでもロシアの暴挙は⽌めるべきです。ただ欺瞞に⽬を閉じて思考停⽌に陥った⾔葉では、プーチンには響かないのでは無いでしょうか?

 

「プーチンは変わった」「気が狂った」といった情報も駆け巡ります。可能性は0ではないにしても、これでは思考・分析の放棄です。バイデンは痴呆症、習近平は⼩学博⼠(⼩学⽣並みの知能で清華⼤学の博⼠号)といった論評も、表現は⾯⽩いですが、何も語っておりません。

 

聖⼈君⼦では無いにせよ、凡庸な⼈物では、⼤国の権⼒闘争を勝ち抜けるはずもありません。

 

核兵器の使⽤はトップであるプーチンの胸先三⼨、この重要性を考えれば、無責任な分析と⾔わざるを得ません。

 

フェイクニュースの集中豪⾬で、⾔論空間の歪みが拡⼤しております。⾃分の⽴ち位置を⾒失わず、これをチャンスに変えるしたたかさを持ちたいものです。

 

【インフレとデフレ】

私はウクライナ侵攻は起こらないと予測しておりました。理由はインフレです。世界はインフレ抑制に動き始めておりました。ウクライナの問題とは直接関連しませんが、世界情勢は案外、マクロ経済の影響を受けます。

 

この予測は外れました。私の予測に対して、ロシアは資源⼤国なのでインフレに強い、という反論がありました。インフレの激化はロシアが優勢という分析です。ロシアが頼りにする中国も資源⼤国、同様にインフレに強い、とする分析も⾒られます。

 

私はロシアも中国も、インフレに弱いと⾒ております。理由は単純で、インフレ懸念が出ると、ルーブルも⼈⺠元も弱含むからです。

 

「分からなければ相場に聞く」というのが私の流儀です。以下は私の仮説です。

 

専制・談合国家は、デフレに強くインフレに弱いのです。デフレは⽣産過剰の中で市場競争が激化して、価格が下がり続ける状況です。したがって経済効率を悪くするとデフレは改善します。ロシアの専制政治、中国の共産主義は、デフレの特効薬なのです。天然資源での利益より、政権・権⼒維持の優先度ははるかに⾼いので、総合的に⾒ると両国はインフレを活かせない、というのが私の読みです。

 

ソ連の崩壊はインフレの絶頂で起こり、これを契機に世界はデフレ化しました。ソ連時代も天然資源は豊富でした。ロシアがインフレに強ければ、崩壊するのは⽶国のはずです。私が中国経済崩壊論に⼀貫して懐疑的なのも、デフレが続いていたからです。インフレ・デフレは経済現象、貨幣的な現象に留まらず、政治現象でもあるのです。

 

今回もインフレが進むので、⻑期化すればロシアは第⼆の敗戦・再解体を迎え、世界のパワーゲームから退場する、と私は⾒ております。これは⽶中対⽴の⾏⽅を左右する、中国には頭の痛い問題だと思います。

 

ウクライナも、腐敗・⾮効率ではロシアに負けません。ロシア・ウクライナ紛争は元来利権争いでした。

 

ウクライナのゼレンスキー政権は、⽶国がトランプ政権の折にはトランプ⼤統領に忠誠を誓いました。バイデン政権に変わり、ウクライナの親トランプ派の排除の要請を受けると、いとも簡単に応じました。

 

節操はありませんが、ロシアに対抗する意図は⾒て取れます。農業⼤国で後述の軍事技術をはじめ先端技術を持つ国ですが、腐敗が酷く、経済は発展しませんでした。

 

デフレは腐敗を温存します。温存どころか助⻑してしまいます。

 

市場が効率的だと、デフレは悪化します。競争に晒される⺠間企業は、デフレでも効率化を進めざるを得ません。代わりに政治・⾏政の腐敗・談合が進みやすくなります。経済的には倫理観の乏しい政策が正解となります。弱者は相変わらず競争を強いられ、強者は談合して⽢い汁を吸います。このデフレの⽭盾が、強者の談合に⽴ち向かうトランプ型政権を産みました。各国にトランプ型の政権が誕⽣しました。

 

トランプ型政権は談合(≒国際協調)を破壊し、強者間の分裂が経済効率を悪化させ、経済はインフレに急展開します。インフレは庶⺠の⽣活を直撃、各国の政権を揺さぶり、さらに政治は競争を強いられ、政治の透明化が進みます。

 

私は経済が⾒えないときは政治を⾒て、政治が⾒えなくなると経済を⾒ております。そう考えるとウクライナ侵攻は、デフレが引き起こした既存権⼒層の利権争いにも⾒えます。

 

【中国からの視点】

最後は中国の視点で⾒てみます。⽶中対⽴は中国の外交戦略の最優先課題です。⽶国に対抗するには、ロシアは重要です。⽶中対⽴が継続する限り、ロシアの没落は中国の国益を損ねます。そのため中露の絆は簡単には壊れないでしょう。

 

⼀⽅でウクライナも、中国の国際戦略である⼀帯⼀路の中核国、中国利権が集まる場所で

す。ここでは中露は主導権を争う関係です。⼀枚岩とはいきません。特に政権維持に重要な軍事⾯からこの関係を紐解くと、この問題の複雑さが⾒えてきます。中国の派閥や利権構造まで分析すると、さらにこの関係は興味深いのですが、やや根拠が薄弱、もう少し取材をして、次回以降にご披露いたします。

 

⻑い国境を接するロシアは、最新兵器を中国には売却しませんでした。これを積極的に売却したのがウクライナです。ウクライナは旧ソ連の軍事産業の集積地で、ロシアもウクライナから武器(特に部品)を購⼊する関係でした。ロシアとの関係が悪化すると、ウクライナはロシアへの武器売却を停⽌します。この武器を買ったのが中国です。

 

たとえば空⺟遼寧はウクライナ産です。ソ連時代の空⺟はほぼウクライナで作られました。ロシアが出し渋る最新鋭戦闘機Su-33もウクライナが中国に販売しました。空中空輸機、揚陸艦、最新鋭レーダー、他にもいろいろあります。

 

こうした兵器を分解し、中国は国産化に成功します。利権争いの渦中とはいえ、ロシアにとって、あるいは⽶国にとっても、これは驚天動地の⾏動でした。

 

2014年に中国は、ウクライナ最⼤のエンジン製造会社(モートル・シーチ)の買収を試みました。軍事技術にも転⽤される、世界最新鋭の技術を持つ会社です。

 

⽶国はウクライナ政府に再国営化を要請、軍事技術の中国への流出を阻⽌しました。国境を接するロシアにとっても、これは⼤きな脅威です。⽶中対⽴を抱える⽶国も、ウクライナの節操のない⾦儲けに、怒り⼼頭といったところでしょう。

 

「ウクライナへの全⾯侵略は許さないが、ちょっとだけなら悩ましい」という趣旨のバイデン⼤統領の失⾔は、世界中から⾮難を浴びました。他の利害が合うなら⽶露で腐敗したウクライナを共同管理したい、というのは⽶国の本⾳でしょう。

 

当初のプーチンの⼤局観に、誤りはなかったと思います。どこかでバイデンを過⼩評価して、道を誤ったのでしょう。あくまでも私の想像ですが・・・

 

ウクライナのNATO⼊りは、中露共に反対です。ただロシアの傀儡政権樹⽴となると、中国は軍事技術源を失い、⾯⽩くありません。⼤国を⼿⽟に取るしたたかなウクライナの外交ですが、⼀つネジが狂うとこのように、収拾がつかなくなります。

 

これはロシアの外交にも⾔えます。当初は⽶国とは歩調を合わせる余地が⼗分にありました。ところがウクライナでは利害が対⽴する中国を抱き込み、⽶国をNATO側に追いやってしまいました。

 

ここからは私の妄想ですが、ウクライナとロシアは腐敗の分配で対⽴し、ウクライナと中国は、恐らくは腐敗で⼿を握り、国際情勢を⼀変させました。

 

ロシアは腐敗で政府・軍が弱体化し、外交交渉も軍事作戦もミスが⽬⽴ちます。ウクライナ国⺠は祖国防衛の⼤義で団結し、その上国際世論を味⽅に付けました。腐敗を代弁していた⼤統領は役者、現在は脚本を書き換えての名演技を⾒せております。総監督はデフレ、演出は腐敗といった布陣なのでしょう。

 

◎本レポートはリアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ26【2022年3⽉18⽇:⼄⼥座満⽉】、の文章を大原浩の責任で抜粋・編集したものです。

 

★沼⽥ 榮昭(リアル曼荼羅プロジェクト主宰)

 

楽天・サイバーエージェントなど有⼒企業の上場を ⼿掛け、⼤和証券株式会社公開引受部勤務時代から 通算して、70社強の株式公開を実現、「伝説の株式 公開請負⼈(⽇経新聞記事より)」と⾔われる。上場会社⽣涯100社構想に向けて、スタートアップ企 業の発掘・育成・投資に現在も邁進。

 

2000年〜2021 年まで21年間、サイバーエージェントの社外役員を 務める。⽇本証券アナリスト協会検定会員(証券アナリスト)。

 

⾼野⼭真⾔宗⼤⽇寺(代々⽊⼋幡)で得度、紫雲⼭宝瑞院(仏教寺院)副住職(就任予定)、復旦⼤学(中国・上海)⽇本研究センター客員研究員、⼤阪⾳楽⼤学客員教授、中華⼈⺠共和国主治中医師(内科)。真⾔密教、統合占星術・星平会海、量⼦⼒学波動デバイスTime Waver等を取り⼊れた「株式公開レベル」の経営⽀援を実施。

 

★ファイブアイズ・ネットワークス株式会社

 〒150-0044 東京都渋⾕区円⼭町5-4

 フィールA渋⾕1402号 isao.numata@5is.co.jp

 

 

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