天才バカボンと修行
「孤高の神」と「より大きな自分」
西洋では元来、神と個人が直接向き合います。神は人と、断絶した存在です。
それに対して、東洋は「より大きな自分」「より大きな世界の中での自分」を見つめます。
四柱推命は年月日時の4つ柱の干支(天干と地支)で見ます。地支は個人の内部で作用し、天干は外部とシームレスに接続します。「サラリーマンに運勢無し」とも言いますが、
会社など、より大きな世界への従属度が高いと、個人の天干は作用しない場合もあります。天干を構成する十干は個性的ですが、十干の関係性を示す通変星は、対人関係や社会との関係を示唆するメッセージが中心です。
自分の枠組みが変われば、人生のミッションも変わります。小さな自分では、小さな利己的なゴールしか描けません。修行は自分を拡大する作業、東洋では自分作りを優先します。
四柱推命で語るなら、まずは自分の4つの天干を使いこなします。その上で自分にない天干を、社会・他人との関係・摩擦の中で学びます。そして最後は、自分の中に十干を統合します。一神教的な絶対神は登場しません。十干を開く各プロセスは魂の喜びに直結、そのため神と個人との断絶も意識しません。この辺りの事情を図で表現したのが、私は金剛界曼荼羅と考えております。
友人のインド占星術師によれば、インドにも五術(中国・道教の「命・卜・相・医・山」を統合した道教の修行体系、四柱推命は「命」に該当)に相当する概念があるそうです。
「命」は「ジョーティッシュ」、卜(ぼく)は「ムフールタ」、相は「スターパティアヴェーダ」、医は「アーユルヴェーダ」、山は「アーサナ」「プラーナヤーマ」です。ジョーティッシュは、本来、悟りに至る修行の羅針盤・方法論を明示するのが目的といいます。私はそれを伺って、目が覚める思いがしました。四柱推命も吉凶の判断より、修行に応用する技術ではないのか、と常々感じておりました。
ジョーティッシュでは、どんな師につくべきか、どんな修行をするべきか、などが明確に出ます。どんな戒律(≒日常習慣?)が効果的か、といった判断もするようです。結果は私の修行遍歴そのもの、まさに目から鱗でした。私の場合、師や修行分野の制約は無く、独力で道を開くのが適しているそうです。各分野に師と慕う方はいらっしゃいます。ただ最初は疑い、相対化しながら学び、お付き合いを長く重ねる中で、いつの間にかお近くにいる感じです。
ジョーディッシュの「悟り」とは、「自分の中に太陽系を統合すること」だそうです。「十干を統合する」も似た響きを感じます。宗派によっては銀河系を統合する、といった壮大な話も聞きます。理論的には有り得そうですが、十干の統合だけでも、私の人生は短すぎます。
儒教は「修身・斉家・治国・平天下」と修行の順序を説きます。ただ実際は、修身のレベルに応じて、斉家・治国・平天下も連動して変わります。ちなみに斉家は「家を整える」という意味ですが、「家」とは日本でいう「家庭」ではありません。中国の「家」は、現在でも大都市以外では、一族が支配する村落共同体です。現代に置き換えれば、政治・ビジネスなどの社会的な活動の場と見るべきでしょう。
四柱推命の月柱も家庭運と説明されますが、これも原意は社会運に近いと思います。実際に占ってみても、その方がしっくりと来る気がします。
天才バカボンと修行
さて、神道は「道」のみ、「教」とは言いません。道は「道」教から来るのでしょうが、現代風に言えば「生き方」「ライフスタイル」でしょうか?自分の十干が平天下へと拡大するプロセスを、私は「道」と捉えております。日本では自分の十干を眠らせて、社会や組織に合わせることを「道」と捉える風潮もあります。いずれにせよ十干を開く経路が「道」、神仏とともに生きるライフスタイルにつながります。
明治期には西洋から逆輸入された、歴史研究・文献研究を基本とした仏「教」が、日本をも席巻します。キリスト教との対比から、これが近代的な仏教と歓迎されました。仏は人です。つまり仏教は、人が人を礼拝します。西洋から見ると「仏教は哲学」です。
日本の仏教界は、本来自分の内部の存在である仏が、客体として外に飛び出し研究対象にもなる仏教に、少々戸惑いを覚えます。ただこれを契機に、様々な仏教界のタブーが打ち破られ、仏教は近代化を遂げます。
赤塚不二夫氏の漫画「天才バカボン」の登場人物「レレレのおじさん」のモデルは周利槃特(しゅりはんどく)というお釈迦様の高弟です。自分の名前すら覚えられない程のバカだった、と言われます。お釈迦様の言いつけを守り「塵を払って、垢を除かん」と唱えながら掃除に集中したところ、3年で天眼を得た(悟りを開いた)、と言います。昔も今も、仏教修行の第一歩は掃除です。寺院では今も、熱心に掃除に取り組む修行僧が見られます。仏
教が自分の外の神や哲学・理論を崇める教えなら、この話は成り立ちません。ちなみにバカボンはバカヴァッド、サンスクリット語で「お釈迦様」です。
最後は「これでいいのだ」と悟りの境地を表します。
私は便宜的に、魂と心とに分けて説明します。魂は宇宙にもつながる十干の働き、心は肉体の内部に留まる十二支の働きです。魂と心は一体、本来は切り離すことはできません。魂の声は内なる声、宇宙の声、潜在意識の声でもあります。現世の利害と一致することもあれば、一致しないこともあります。人間は魂の楽しみのためこの世に生まれた、と私は感じます。魂が喜ぶと、楽しく活動的になりリスクを恐れません。時には死をも克服します。結果的に現世利益に繋がる場合も多いようです。
心は、魂を載せる肉体の維持・発展のため、社会や他人の声など外部の声にも耳を傾けます。時に、心と魂の判断は分裂します。魂が喜ばないと、地位も名誉も異性も健康も、人間には意味がありません。生命の維持・発展は最重要事項ですが、魂も負けず劣らず重要です。西洋は心からスタートし、東洋は魂からスタートしますが、ゴールが異なる訳ではありません。魂と心の双方から見ないと全体像を見誤るようです。
南無大師遍照金剛 沼田 榮昭 拝
◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ16【2021年10月6日:天秤座新月】の文章を、大原浩の責任により、抜粋編集したものです。
★南無大師遍照金剛 沼田 榮昭
沼田功
ファイブアイズ・ネットワークス株式会社 代表取締役
日本証券アナリスト協会検定会員
復旦大学日本研究センター客員研究員
1964年 東京都練馬区に生まれる。
1988年 大和証券株式会社入社(本店第二営業部池袋支店配属)。
2000年 ファイブアイズ・ネットワークス株式会社設立 代表取締役(現任)
株式会社サイバーエージェント 監査役(現在は取締役監査等委員)。
2013年 徳石忠源(上海)投資管理有限公司(リンキンオリエント)
マネージング ディレクター(現任)、その他2社未公開会社の社外取締役を兼務。
著書 「IPO(株式公開)入門」(オーエス出版社)。
生涯100社上場を目指し、サイバーエージェント、楽天をはじめ現在70社を更新中。
研究調査等紹介
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