IPOと「盛りのついた優秀な雄猿」

IPOと「盛りのついた優秀な雄猿」

能と「体が開く」
2021 年 7 月 23 日、世界を舞台に活躍された能楽師・浅見真州先生が死去されました。
新聞の訃報で知りました。大学時代には月2 回、私は浅見先生のご自宅にお邪魔して、お能の個人レッスンをお願いしておりました。

謡が中心ですが、仕舞の手ほどきを少し、受けました。卒業後も一般のお弟子さんに交じり、グループレッスンに参加しました。ただ就職した証券会社が忙しくなると、自然と足が遠のきました。

学生劇団を主催していた恩師・宮城聡氏(文末資料参照)からは、「『体』を学ぶなら、お能かオペラを見なさい」とアドバイスを頂きました。松岡心平専任講師(当時)が外国人限定のお能のゼミを開講しておりました。私は先生に頼み込んで、日本人でただ一人、 ゼミに参加しました。ゼミの前後には松岡先生とご一緒して、コーヒーをご馳走になりました。松岡先生から伺った能の身体論は、大変興味深いものでした。

お能は当初「猿楽」と呼ばれました。実際に猿に似た芸でした。観阿弥は「体が開いて」 いました。上演記録から逆算すると、現在の3倍~4倍のスピードで演じられました。現在のお能とは、異なる身体を持って いました。

この「身体」について「高句麗(今の北朝鮮)の舞踏や時宗の踊り念仏にヒントがあるのでは」と、松岡先生は考えておられました。東アジア一帯に見られるある種の「身体」 を想定されておられたようです。松岡先生は今や東大名誉教授、 現在はさらに進んだ見解をお持ちかもしれません。

お能の身体変化は、世阿弥の世代にスタートします。ライバルと目された田楽の犬王も、貴族文化の浸透に合わせ、身体の様式化をリードしました。

文献研究だけでは身体論に届きません。そこで松岡先生にお願いして、私は浅見真州先生をご紹介頂きました。宮城聰さんは当時、「お能の体は開けている」と言っていました。

私は敢えて「体」と「魂」を分けました。体が様式化する中でも、魂を開き続けること で、演者は舞台で霊界と交流しながら、この交流を通じて観客の心をも動かします。私は便宜上、「体は閉じている」が「魂が開いている」という考え方をしております。

観阿弥・世阿弥が活躍した中世は、宗教の中心が身体から教義(文献)に切り替わる、 長い過渡期でした。「翁」と呼ばれる宗教的演目が猿楽(お能)の原型です。古事記・日本書紀の神々は、他人の心には入りません。中世、人の心にアクセスする神々の物語が登場し、たとえば吉田神道へと集大成されました。身体で表現された神々が教義を持ち、 この民族的な心象風景の変化がお能の演目にも影響を与えました。見えない心を見せるため、身体の様式化が進みました。

「体が開」けば同時に「魂も開」きますが、たとえ体は抑えても、魂は開き続け、この魂を見せるための身体を開発・発展させました。

IPOと「盛りのついた優秀な雄猿」
「ちょっと今回は理屈っぽいね!」というのはここまでの文章に対する知人のコメントです。「ただ沼田さんが大和証券に入社して、体を閉じてビジネスに対応した状況(文末資料参照)が、お能や仏教・神道の歴史にも見られる、という説は面白いですね。こうした社会の 抑圧を、女性は男性以上に感じるから、『体を開く』話に共感するのかもしれないね」。

眼鏡の奥はクールですが、話に乗って下さっております!

「はい、猿楽も田楽も恐らく、農業を通じて村落共同体が発展し、日常生活の中では生存本能・生殖本能に抑制が働きはじめた時代の『息抜き』だったのでしょう。ここで『体を開いて』、たとえば 1 夜限りの『乱交パーティー』が始まります。個々人が無秩序に生 存本能・生殖本能を開いては、村落共同体が崩壊します。

だから人間は大脳新皮質を発達させて、本能を抑え込む方策を発明しました。」 「この大脳新皮質が、宗教の『教義』の本質なんですね!松岡先生、過激です!」

さて、IPO(株式公開)に不可欠なイノベーションは、経営者の「本能」から発します。しかし 地位・名誉を得て生存本能が満たされ、あるいは高齢となり生殖本能が衰えると、イノ ベーションも止まります。

私の専門は IPO ですが、コツは簡単で「盛りのついた優秀な雄猿」を探します。雌猿でも構いませんが、私は男性なので、時に関係性が難しくなります。年齢・学歴は関係ありません。一定程度社会的成功を収めると、生存本能・生殖 本能が満たされ、企業成長も止まります。

一方で生存本能・生殖本能が満たされずに年 齢を重ね、妙な回路が固定化している中年以降の経営者も見られます。猥談が過ぎたり、 他人に攻撃的だったり、全身から欲求不満が滲み出てしまいます。背後には性的なコン プレックスや罪悪感、実力以上の責任・見栄など、一種の恐怖心や抑圧が絡みます。時折「私は性欲が強すぎて・・・」なんてご相談もいただきます。モヤモヤしながらもチャレンジングに動けるなら、私は経営者としては、理想的な状況と思います。まぁ波乱 万丈な人生、大人の上手な息抜きは必要でしょうが・・・ ・

イノベーションは社会を変革します。大脳新皮質が構築する社会は、あらゆる規制をかけてイノベーションに抵抗します。この大脳新皮質に対応するのが CFO(最高財務責任者 )です。

猿と CFO のコンビの見極めが、私の IPO 戦略の基本です。現代社会では、猿もCFO 語を話せる場合があります。観阿弥は猿楽ですが、世阿弥が目指した境地は、大脳新皮質のニーズをも取り込んだ、「CFO 語を解する猿」でした。現代のネット社会では、 賢い猿なら一人でも、それなりに成功します。

ただ奇跡のエネルギーは、人と人との間 に形成される「量子場」の大きさで決まります。魂を開くと、この量子場の形成が促進 されます。一人では奇跡は起こせないのです。

★<文末資料>
「魂を開く」
「魂を開く」とは、私の造語です。

大学時代に「体を開く」 いう言葉を耳にしました。学生劇団(冥風過劇団)を主催されていた宮城聰先輩の言葉で、今や日本を代表する演出家の お一人のようです。

当時の宮城さんの俳優訓練法は音楽の中 で、あるいは無音で、一人で、もしくは集団で、自由自在に 俳優が、肉体や声で表現します。何か「制約」を感じると、 宮城さんがユーモラスなコメントを飛ばします。自由を感じると、宮城さんは楽しそうに大声でいつまでも笑います。

簡単な俳優訓練法ですが、「体を開く」と演技や声に留まらず、人間が変わります。引き籠 もりが改善し、いじめが止まります。その人らしくなります。私も見様見真似でやってみました。見ていると難しいのですが、やってみると簡単で、その上効果は抜群でした。

「体を開く」と俳優の舞台が変わります。開いた体は、舞台では、観客の視線に支えられます。緊張しますし、あがるのですが、観客の見えない力に支えられ、自分がどんどん吹き出します。私は今も、人前で話をする際には、無意識にですがこの方法を使います。

気のサーフィン
講演を始めると人柄が変わると言われます。聴衆の「気」にサーフィンをする感じです。 そんなときはつくづく、自分では分からなくても、人間は周囲の力に支えられているんだなぁ、と感謝の念が湧いてきます。

観客の視線に支えられると、次はこちらから、観客の心に染み入り、ある程度、操作することができるようになります。妙な心理学ではありません。自分と相手との「気」の 敷居が低くなり、交流が始まるのでしょう。

この技術も私はビジネスで活用しています。 ただ時折、相手の怒りを買うケースがあります。土足で心の中に入り込む感じがするようです。中国で特に、反発・抗議を受けました。

そういう人とは後に、不思議と生涯の 親友になります。最近ある霊能者と会食した際に、私も同じ体験をしました。「見ても いいですか?」と意向を確認されてはいたのですが、全てが見透かされ、操られる恐怖 を感じました。初歩的な俳優レッスンが高度な霊能に繋がっている、30年経過して、この点に初めて気付きました。

「芸能人は売れ始めると、体が開くんですよ」と宮城さんは当時、言っておりました。最初は「なんじゃそりゃ~」でしたが、すぐに私にも分かるようになりました。宮城さんの俳優訓練法は、それを逆手に取り、必要条件である「体を開く」レッスンからスタートするのでしょう。俳優に留まらず、政治家にせよ、財界人にせよ、僧侶にせよ、成功者は大抵、体が開いています。この目線は、株式公開の候補を発掘する上で、役に立ちました。

どんなに凄い話をしていても、体が閉じていれば口だけです。ただ一流の詐欺師は体も開いています。ここは悩ましいところです。

私は自分で劇団を設立し、実験を繰り返しました。体を開くのは、見ていると難しそう ですが、やってみると簡単でした。また体を開くことは、とても楽しい体験でした。

劇団では食べてはいけません。それでもあまりに楽しくて、就職等は考えず、一生お芝居で生きていきたい、そう思いました。ただ体を開く専門家でもある俳優さんは食べられないのに、大成功者である大スターや政治家・経営者はどうして自然に体が開けるのか、この謎は大学時代には解けませんでした。楽しくてあまり気になりませんでした。

魂を開く喜び
私は思いもしない行動に出ました。大学を卒業して大手の証券会社に就職したのです。 予想通り、体を開いた状態では、全く業務が進みませんでした。東大卒にも関わらず、 私はすぐにダメ社員の烙印を押されました。私はお芝居を忘れ、体を閉じて、自分で何重にも殻を被り、サラリーマン社会へと適合していきました。お芝居への関心は持ち続けましたが、体を閉じた私から、お芝居の人脈はどんどん離れていきました。

「体を開く」 ことは楽しいのですが、これがプラスに働かない「場」もあります。ビジネス社会では大抵、損をします。交感神経と副交感神経の関係にも似ていますが、体を閉じたり開いたり、人間は生きる場所により、開き方を調整する必要があるのでしょう。

「実は魂を開く喜びを、真言密教の常用経典である『理趣経』では、『大楽』と呼びます。
理趣経はある意味、この大楽を説いたお経です。

理趣経には「十七清浄句」と呼ばれる、SEX 礼賛の文言があります。この当たりに触れた 弘法大師の著作などは、古来より「不読段」とされ、原文は読めますが、一般の方向け の解説が許されません。

私も「一般の方」ですので、この部分の伝授は受けておりません。ただ原文を読めば、下手な解説より、分かりやすいかもしれません。

南無大師遍照金剛 沼田 榮昭 拝

◎本レポートは、リアル曼荼羅プロジェクト・メルマガ17【2021年10月20日:牡羊座満月】および18【2021年10月20日:牡羊座満月】の文章を、大原浩の責任により、抜粋編集したものです。

★南無大師遍照金剛 沼田 榮昭 
沼田功

ファイブアイズ・ネットワークス株式会社 代表取締役
日本証券アナリスト協会検定会員
復旦大学日本研究センター客員研究員

1964年 東京都練馬区に生まれる。
1988年 大和証券株式会社入社(本店第二営業部池袋支店配属)。
2000年 ファイブアイズ・ネットワークス株式会社設立 代表取締役(現任)
株式会社サイバーエージェント 監査役(現在は取締役監査等委員)。
2013年 徳石忠源(上海)投資管理有限公司(リンキンオリエント)
マネージング ディレクター(現任)、その他2社未公開会社の社外取締役を兼務。

著書 「IPO(株式公開)入門」(オーエス出版社)。

生涯100社上場を目指し、サイバーエージェント、楽天をはじめ現在70社を更新中。

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